&STORY 名品が紡ぐ物語
四つ葉が運ぶ、幸せのかたち。〈ヴァン クリーフ&アーペル〉のブレスレット。October 27, 2026
BRAND: Van Cleef & Arpels ITEM: Bracelet

四つ葉が運ぶ、幸せのかたち。
愛を求めながらも、ままならない。映画『怒りの羊』のロミー・シュナイダーは、翳かげりのある美しさで視線を奪う。胸元に輝くのは「アルハンブラ」のロングネックレス。「いつの日にか幸せを」と願う心の機微を映し出すように、繊細なゴールドビーズに縁取られたモチーフが揺れる。やがて、そのネックレスはスクリーンをも超えて、世界で愛される〈ヴァン クリーフ&アーペル〉の象徴となった。
「アルハンブラ」の誕生は1968年。幸運の四つ葉のクローバーに着想を得た、20個の意匠がネックレスを彩った。メゾンの創業者の甥で、蒐集家として知られたジャック・アーペルは、自邸の裏庭で四つ葉のクローバーを見つけては同僚に贈ったという。「幸運になりたければ、幸運を信じなさい」。その口癖は、いまもゴールドの小さな葉に息づいている。
1960年代末から’70年代、「アルハンブラ」がもたらしたのは、ハイジュエリーを身近に、自由に楽しむという新しい感覚だった。デコルテを飾り、指や手首にいくつも重ねて。ドレスアップのためだけではなく、毎日身に着けられるジュエリーとして、自分らしく装う女性たちに幸運を届けてきた。
深い青、森の緑、漆黒、夕映えの赤。ダイヤモンドのきらめきに加えて、「アルハンブラ」に取り入れられてきたラピスラズリやマラカイト、オニキス、カーネリアンといったハードストーンには、海や大地、旅先で出合う風景が浮かぶ。それは、自然へのまなざしと、まだ見ぬ土地への想像力を核にクリエイションを生み出してきたメゾンならではの色彩だ。
ゴールドのモチーフには、伝統的なギヨシェ彫りが施され、放射状のパターンが太陽の光のような輝きを放つ。初代の佇まいを受け継ぐ〝ヴィンテージ〞をはじめ、サイズや連なりを変えた〝マジック〞や〝スウィート〞など、「アルハンブラ」は時代とともに進化してきた。半透明の鮮やかなエナメルをあしらった最新作も、私たちの心に語りかけてくる。
モチーフに生命を与えるのは、メゾンが〝黄金の手(マンドール)〞と呼ぶ職人たちの仕事だ。石は色、模様、光沢を見極めて選ばれ、四つ葉の輪郭に合わせて調整される。ゴールドでかたどられた曲線の枠は細やかなビーズで縁取られ、石をセッティングして丁寧に研磨。素材選びから完成まで、15に及ぶ工程を経て、クローバーは幸せのシンボルとなる。
半世紀を超えて、日常に寄り添ってきた四つ葉のジュエリー。その小さな幸運に、あなたならどんな願いを託すだろう。
ブレスレット「ヴィンテージ アルハンブラ」より、奥からイエローゴールド×オニキス¥858,000、イエローゴールド¥1,227,600、イエローゴールド×ピンクエナメル¥946,000(以上ヴァン クリーフ&アーペル/ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク 0120‒10‒1906)
photo : L.A.Tomari edit & text : Aiko Ishii
※この記事は、No.156 2026年12月号「&STORY」に掲載されたものです。
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