長田佳子の季節のハーブを愉しむお菓子。
vol.19 マジョラムとオレガノのスコーンHerbal Sweets / October 22, 2021
自然からのいただきものであるハーブの力を取り入れて、心と体に優しく寄り添う「レメディ」のようなお菓子を作る〈foodremedies〉として活動する菓子研究家の長田佳子さん。砂糖にはない甘さやほのかに感じる苦味、鼻をくすぐるいい香り——。ハーブはそのときの心と体の状態によって、五感で感じ取るものが繊細に変化する奥深さを秘めた暮らしに役立つ植物です。そんな季節のハーブを使った長田さんオリジナルのお菓子のレシピを紹介するこの連載。第19回は「マジョラムとオレガノのスコーン」をお届けします。
This Month's Herbal Sweets
「マジョラムとオレガノのスコーン」

朝食や午後のおやつにぴったりな、ハーブの香り漂う軽やかなスコーン。
パンを食すには、胃が重たいと感じる起き抜けの朝。あるいは、ちょっと小腹がすいた午後。そうしたシチュエーションに、スコーンを手作りすることをお勧めしたい。なぜなら、スコーンは小麦粉やバター、牛乳など、日常的に頻繁に使う材料で作ることができる、とても軽やかで素朴なおやつだから。
自宅で作ると、何より焼きたてを食べられることが至福。その時間は、繰り返す日々の中で、ちょっとした贅沢をもたらしてくれるかもしれない。
フルーツやチョコを使ったスコーンもおいしいけれど、甘いものが得意な人じゃなくても食べやすいスコーンをレパートリーとして持っていると、ちょっとした“食事”にもなり得るし、どんなゲストにも喜ばれたりもしそうだ。
そこで考えたのが、オレガノとマジョラムのドライハーブの爽やかな香りが漂うスコーン。イタリア料理にもよく使われるこれらのハーブは、スーパーでも手に入れやすい。ハーブを育てている人ならば、3日間ほど天日干しにして、ドライハーブにしてから使用してみるといい。ドライな状態のほうが生地に馴染みやすく、そうしたニュアンスにこだわることが、おいしさの秘訣になる。
そして、もうひとつ大切なのが、生地を作る際のバターの扱い方。小麦粉にバターをすり合わせていくことで、口の中で溶けていく、ホロホロとした食感を導くことができます。
実際、食べるときは、手で半分に割って、ひと口で食べられるサイズに。
シンプルに何もつけずに素材の味を楽しんだ後は、好みのジャムやクロテッドクリームなどを塗ってみると、味わいがまた、豊かなものに。市販のクロテッドクリームの代わりに、サワークリームと生クリームを混ぜ合わせて自分で作ってみるのもおすすめです。
噛み砕くたびにホロホロと崩れ、味わい深いスコーン。口内にハーブの爽やかな香りがほのかに広がっていく心地よさがクセになり、きっとまたすぐに作りたくなるはず。

左/オレガノ
地中海沿岸原産のシソ科の多年草。イタリア料理には欠かせないハーブで、少し苦味のある爽やかな香りが特徴。シソ科のハーブの中でも、最も香りが強いといわれています。ピザやトマトソースなどの香り付けによく使われています。また、古代ギリシャでは、料理用としてだけではなく、芳香剤、鎮痛剤として広く利用されていたそう。また、抗菌、殺菌作用、消化器系の不調の緩和、風邪予防にも効果が期待できます。
右/マジョラム
シソ科の多年草。オレガノは同属のハーブ。古代ギリシャ・ローマ時代から栽培されていたハーブで、“幸福のシンボル”とされていました。あらゆる肉料理はもちろん、野菜や豆との相性も良く、シチューやスープなどの煮込み料理にもよく使われています。ハーブティーのマジョラムには、体の中の毒素を排出してくれる効果もあると言われていて、肝臓を強化する働きもあるため酒を飲む人にもおすすめ。マジョラムのアロマオイルは血行促進のサポートにも。
レシピ 6個分
・薄力粉150g
・ベーキングパウダー8g
・きび砂糖15g
・塩ひとつまみ
・バター(無塩)35g
・牛乳80ml
・お好みのジャムやクロテッドクリーム適量
・ドライマジョラム、オレガノ適量
How to cook

photo: Hiroko Matsubara edit & text : Seika Yajima
ハーブ:まるふく農園 キッチンクロス提供:FLUFFY AND TENDERLY
器: ヨーロッパ アンティーク
菓子研究家 長田 佳子
