長田佳子の季節のハーブを愉しむお菓子。

vol.20 カルダモンのチョコチップクッキーHerbal Sweets / November 20, 2021

自然からのいただきものであるハーブの力を取り入れて、心と体に優しく寄り添う「レメディ」のようなお菓子を作る〈foodremedies〉として活動する菓子研究家の長田佳子さん。砂糖にはない甘さやほのかに感じる苦味、鼻をくすぐるいい香り——。ハーブはそのときの心と体の状態によって、五感で感じ取るものが繊細に変化する奥深さを秘めた暮らしに役立つ植物です。そんな季節のハーブを使った長田さんオリジナルのお菓子のレシピを紹介するこの連載。第20回は「カルダモンのチョコチップクッキー」をお届けします。

This Month's Herbal Sweets

「カルダモンのチョコチップクッキー」

カルダモンのチョコチップクッキー

スパイシーなカルダモンの香り漂う、ザクザク食感のチョコチップクッキー。

時々、定番のお菓子に手を伸ばしたくなることがある。例えば、チョコチップクッキーとか。子どもの頃から親しみのあるメーカーのものも“懐かしのおやつ”という風情で味わい深いものがあるけれど、ハーブを使って作ってみると、まるで魔法がかかったように上品で豊かな味わいになるから面白い。

カレーやチャイに使われるハーブとしてお馴染みのカルダモンは、クッキーの生地や甘さ控えめなチョコとの相性がとてもよく、ピリリとしたスパイシーな風味とエキゾチックな香りがクセになります。“スパイス好き”が愛する味わいになるので、甘いものがそれほど得意ではない人でも楽しめるクッキーが作れるはず。

実際、カルダモンは北欧ではお菓子作りによく使われているそう。寒い季節が長く、家の中にいる時間が長い北欧の人々は気分を盛り上げるためにカルダモンロールやカルダモン風味のクッキーなどを作り、おやつの時間を楽しむ文化が根付いています。

クッキーの生地には全粒粉と薄力粉の両方を使うのがおいしさのポイント。混ぜ合わせることで、ザクザクとした食べ応えのある口当たりと独特の香ばしい味を導くことができます。焼き上げるときのちょっとしたひと手間をかけることもお忘れなく。チョコレートを使うことでクッキーの底面が焦げやすくなるので、10分間のうちに裏返してうまく焼き上がるように生地の状態を見ながら作業を進めてみましょう。

焼いている間に音楽をかけながらお茶の用意を。晩秋に想いを馳せるべく、ビル・エヴァンスの『Portrait In Jazz』なんかもとてもおすすめ。お気に入りのマグにアールグレイを注ぎ、ひとときの安らぎの時間を楽しんで。

カルダモン<br /> ショウガ科の多年草。南インド、マラバル地方が原産。カレーやインド料理に欠かせないことから“スパイスの女王”とも呼ばれ、爽やかでありながら高貴な香りが特徴。チャイのスパイスとして、また中近東ではコーヒーに混ぜて飲まれている。ホールのカルダモンは切り込みを入れたり、種を取り出して刻んで使ったりするとより効果的に香り付けをすることができる。スパイシーな風味は口臭予防にも。また、カルダモンの香りは心を落ち着かせ疲労感を和らげる作用が期待できる。
カルダモン
ショウガ科の多年草。南インド、マラバル地方が原産。カレーやインド料理に欠かせないことから“スパイスの女王”とも呼ばれ、爽やかでありながら高貴な香りが特徴。チャイのスパイスとして、また中近東ではコーヒーに混ぜて飲まれている。ホールのカルダモンは切り込みを入れたり、種を取り出して刻んで使ったりするとより効果的に香り付けをすることができる。スパイシーな風味は口臭予防にも。また、カルダモンの香りは心を落ち着かせ疲労感を和らげる作用が期待できる。

レシピ 10枚分

・製菓用チョコレート(カカオ含有量70%以上)40g
・無塩バター 60g
・卵 1/2個
・きび砂糖 30g
・ベーキングパウダー 1g
・カルダモンホール(中の種を出して刻む)5粒分
・全粒粉 30g
・薄力粉 40g

[下準備]
バターを常温に戻す。チョコレートを細かく刻む。

How to cook

1.カルダモンは皮からさやを出して細かく刻む。
1.カルダモンは皮からさやを出して細かく刻む。
2.ボウルにバターときび砂糖を入れ、ゴムベラでやわらかく馴染ませる。
2.ボウルにバターときび砂糖を入れ、ゴムベラでやわらかく馴染ませる。
3.卵を加えて混ぜる。全粒粉、薄力粉、ベーキングパウダーを加え再びゴムベラで混ぜたらカルダモン、チョコレートを加え、生地をひとまとまりにする。生地をオーブンシートに挟んでめん棒で20×20cm程度にのばし、冷凍庫で5分休ませる。
3.卵を加えて混ぜる。全粒粉、薄力粉、ベーキングパウダーを加え再びゴムベラで混ぜたらカルダモン、チョコレートを加え、生地をひとまとまりにする。生地をオーブンシートに挟んでめん棒で20×20cm程度にのばし、冷凍庫で5分休ませる。
4.「3」の生地を取り出し、クッキー型で抜いて天板に並べ、160℃のオーブンで10分を目安に焼く(5分経ったら裏返す)。チョコレートを使うことでクッキーの底面が焦げやすくなっているので、火の通り具合の確認を。
4.「3」の生地を取り出し、クッキー型で抜いて天板に並べ、160℃のオーブンで10分を目安に焼く(5分経ったら裏返す)。チョコレートを使うことでクッキーの底面が焦げやすくなっているので、火の通り具合の確認を。
photo:Hiroko Matsubara  edit & text:Seika Yajima ハーブ:まるふく農園 キッチンクロス提供:FLUFFY AND TENDERLY 箱:イギリスのアンティーク 器:スティーブ・ハリソンほか

photo:Hiroko Matsubara edit & text:Seika Yajima
ハーブ:まるふく農園 キッチンクロス提供:FLUFFY AND TENDERLY
箱:イギリスのアンティーク 器:スティーブ・ハリソンほか


菓子研究家 長田 佳子

レストラン、パティスリーなどでの修業を経て、YAECAフード部門「PLAIN BAKERY」でメニュー開発、お菓子の製造を担う。2015年に独立。〈foodremedies〉という屋号でハーブやスパイスなどを使ったまるでアロマが広がるような、体に素直に響くお菓子を研究している。著書に『季節を味わう癒しのお菓子』(扶桑社)、『全粒粉が香る軽やかなお菓子』(文化出版局)などがある。2021年7月より登録制による動画配信のお菓子教室を開催。

foodremedies.jp

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