花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」

炉開きに寄せる「送り筒」。花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」 Vol.53August 25, 2022

花屋<みたて>に習う植物と歳時記 折々に見立てる 京の暮らし

四季折々に迎える歳時記を、京都の花屋『みたて』が植物を通して表現。一つの作品を通して、京都ならではの生活が見えてきます。

炉開きに寄せる「送り筒」。 みたて

炉開きに寄せる「送り筒」。

 茶人にとっての正月とも言われる炉開きは、亥の月の最初の亥の日に行われる行事。亥の月は旧暦なら10月、新暦では11月のことで、2019年は11月10日がその日にあたる。茶の世界では新しい一年が始まる大切な日だ。炉開きに向け用意を整える茶人と、茶の湯に想いを馳せ、『みたて』が用意したのは竹の花入れ。かつて千利休は花を入れた竹の筒を、薮内流の流祖・薮内剣仲へと送った。そこから切り花、とりわけ珍しい花を贈るのに使われ、贈られたほうは花入れとして愛でた送り筒をアレンジ。白竹の節を削り、小窓をくりぬいて花入れに仕立てた。凛としたミニマムさが野花を引き立てる。
 生けられているのは紀伊上臈杜鵑草、ただ一輪。ふっくらとした釣り鐘のような花が俯いて咲く姿は、気品を備えて存在感を放つ。上臈とは江戸時代の大奥での女官の役職のことで、優雅な貴婦人のようだと名付けられた。杜鵑草の名は内側になった花びらに斑点があることから。今も自生するのは紀伊半島の十津川のみ。京都では大原の寺院、実光院で10月に見頃を迎える。江戸時代から受け継がれる庭園・契心園に咲く紀伊上臈杜鵑草。滝のそばにあって艶やかな緑の葉がよりいっそう、花の黄色を際立たせている。

photo : Kunihiro Fukumori edit & text : Mako Yamato
*『アンドプレミアム』2019年12月号より。


花屋 みたて

和花と花器を扱い、四季の切り取り方を提案する京都・紫竹の花屋。西山隼人・美華夫妻がすべてを分担し営む。

hanaya-mitate.com

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