花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」

春を告げる「おたいまつ」。花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」 Vol.68February 02, 2023

花屋<みたて>に習う植物と歳時記 折々に見立てる 京の暮らし

四季折々に迎える歳時記を、京都の花屋『みたて』が植物を通して表現。一つの作品を通して、京都ならではの生活が見えてきます。

春を告げる「おたいまつ」。 みたて

春を告げる「おたいまつ」。

 涅槃会(ねはんえ)は釈迦の命日に行われる法要のこと。その日は定かでないものの中国では2月15日とされて日本へ伝わり、以来、2月や旧暦を取り入れた3月に行われてきた。沙羅双樹(さらそうじゅ)の下に横たわる釈迦と、周りを囲む弟子や動物が描かれた涅槃図を掲げて釈迦を偲ぶ、仏教の三大行事のひとつ。とりわけ巨大な涅槃図が公開される泉涌寺や東福寺、無病息災を願う菓子・花供曽(はなくそ)が授与される真如堂など、それぞれの涅槃会が行われるなかで、趣を異にするのが嵯峨釈迦堂の名で知られる清凉寺。 「源氏物語」で光源氏が建立した嵯峨の御堂とされる寺院である。鎌倉時代、円覚上人によって始められた嵯峨大念佛狂言と、釈迦が荼毘(だび)にふされる様子を表すというお松明式が行われ、ひときわ賑わいをみせるのだ。お松明(たいまつ)式は鞍馬の火祭り・五山の送り火と共に京都の三大火祭りとされ、3本並ぶ約7mもの高さの松明の燃え方でその年の農作物の吉凶を占う。天狗の顔を模した12の輪が巻きつけられた巨大な松明は、火が投げ込まれると同時に赤々と燃え上がり、その様は圧巻。『みたて』が涅槃会のために仕立てたのは、その松明を写した赤松の「おたいまつ」。い草を使い天狗の顔を再現した。嵯峨野に春を告げるお松明式に、この季節を心待ちにする気持ちを込めている。

photo : Kunihiro Fukumori edit & text : Mako Yamato
*『アンドプレミアム』2021年4月号より。


花屋 みたて

和花と花器を扱い、四季の切り取り方を提案する京都・紫竹の花屋。西山隼人・美華夫妻がすべてを分担し営む。

hanaya-mitate.com

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