ベターライフを考える。「早く起きる」。 連載コラム : 鈴木ジェロニモ #3January 24, 2025

　早く起きる。早く起きるためには前日から準備をしなければならない。早く寝る。早く寝られないとしても早く起きるために早く寝る意志を体に見せつける。24時過ぎに布団に入る。iPhoneのアラーム機能を使って翌朝7:00に音が鳴るようにセットする。眠ろうとする。眠ろう眠ろう眠ろうと意識しすぎると眠れないので、ほどよく深呼吸をする。高校時代の、眠たすぎてどうしようもなかった授業を思い出す。ここに布団があればどんなに幸せなことかと夢想したあの瞬間の自分を今ここに降ろす。布団がある。横たわっている。なんて幸せなことだろう。深呼吸……。そのうち眠っていた。

　ぬんっ。無音の中に意識が起きる。枕元のiPhoneを探る。ある。触って時間を確かめる。6:41。一瞬考える。6:41ということは、まだ7:00にはなっていない。だからアラームが鳴っていない。じゃあもう一度眠ろうか。うん。……。いや、ここだ。ここなんだ。この、何か自然な流れによって目が覚めた、予定より少し早い起床時間に、全身でがばっと起きてしまうべきなんだ。負けるな。勝て。行け。おおおお。意を決して起き上がる。カーテンを開ける。窓を開ける。外は閉店しました、というような薄明るさと寒さで早く起きたことを実感する。どうせ後で眠くなるんだ、と思いながら洗面台へ向かう。早く起きたら気持ちいいのかと期待したが、今のところ気持ちよくはない。早く起きただけでは「ベターライフ」にならない。早く起きて、その後何をするかがベターライフなのだと気づく。洗面台の水がなかなかお湯にならなくて、諦めた後、お湯になった。

edit : Sayuri Otobe