MUSIC 心地よい音楽を。
土曜の朝と日曜の夜の音楽。 今月の選曲家／三島有紀子 vol.1December 04, 2020
December.04 – December.10, 2020
Saturday Morning
ショートフィルムの脚本をオリジナルで書いているのだけど、終わりがない。あの役者さんがこんな表情してくれるだろうか、呟くように歌うんだろうか…、いろいろお芝居を想像してると楽しくて。そんな一日の始まりはこんな美しく深いピアノに包まれて滑り出したい。「沈黙の次に美しい音」を目指したレーベル〈ECM〉が生み出した最高の音楽。このフレーズ自体、なんて素敵な、と思う。作曲者、演奏者たち、ディレクター、そしてレーベル…映画も音楽もたくさんの人のセッションで生まれる奇跡が好きです。
アルバム『My Song』収録。
アルバム『My Song』収録。
Sunday Night
中学生の時、クラス対抗合唱大会があり、教科書に載ってる歌を歌うのは退屈だなあと思ってた。だけど当時とても興奮して観た深作欣二監督の『蒲田行進曲』に出てきたこの歌を歌うなら楽しいかもなと軽い気持ちで提案したら、するっと決まった。華やかで明るいけれど寂寥感を感じる歌。歌ったときの興奮と大会で聞いてる皆の高揚した顔を思い出す。この歌の持ってる力を見た気がしたな。今映画を撮るようになって、歌詞の通り、ほんと映画って「白日の夢」、撮影所は「幻の国」だなあと思う。そのためにみんなが命を燃やす。この歌を口ずさみながら、東映京都撮影所の門を叩いたことを思い出しながら、今日は早く寝て明日もロケハンにくり出そう。いいこと思いつきそうだよ。
アルバム『蒲田行進曲オリジナル･サウンドトラック』収録。
映画監督 三島 有紀子
大阪府大阪市出身。18歳からインディーズ映画を撮り始め、大学卒業後NHKに入局しドキュメンタリーを数多く企画・監督。2003年に劇映画を撮るため独立し、東映京都撮影所などで助監督として現場を学び、NYでHBスタジオ講師陣のサマーワークショップに参加。
『幼な子われらに生まれ』(17年)で、モントリオール世界映画祭 審査員特別大賞など国内外で多数受賞。最新作は、夏帆/妻夫木聡出演の『Red』(20年)。
そのほかの代表作として、『しあわせのパン』(12年)、『繕い裁つ人』(15年)、『少女』(16年)など。
