長田佳子の季節のハーブを愉しむお菓子。
リッチなクリームの味わいに心ほどける
「エルダーフラワーと八朔のシュークリーム」 長田佳子の季節のハーブを愉しむお菓子 vol.36March 18, 2023
自然からのいただきものであるハーブの力を取り入れて、心と体に優しく寄り添う「レメディ」のようなお菓子を作る〈foodremedies〉として活動する菓子研究家の長田佳子さん。砂糖にはない甘さやほのかに感じる苦味、鼻をくすぐるいい香り——。ハーブはそのときの心と体の状態によって、五感で感じ取るものが繊細に変化する奥深さを秘めた暮らしに役立つ植物です。そんな季節のハーブを使った長田さんオリジナルのお菓子のレシピを紹介するこの連載も今回で最終回。今回は「エルダーフラワーと八朔のシュークリーム」をお届けします。
This Month's Herbal Sweets
「エルダーフラワーと八朔のシュークリーム」
小さいけれど、味わいは重層的。濃厚クリームがとろける幸せな時間を。
「ちょっと甘いものが食べたい」。そんな衝動に駆られたときに、食べたくなるお菓子のひとつがシュークリーム。“定番のお菓子”という安心感から、つい手が伸びるのも理由のひとつ。加えて、シュー生地そのものが甘くないから、ケーキほどの甘さを欲していないときに軽く食べられることも魅力に思います。
シュークリーム作りは、生地が膨らむかどうかが気がかりで足踏みしてしまっている人もいるかもしれません。けれど、お菓子作りは「失敗も当たり前、うまくいってラッキー」とおおらかな気持ちで臨むぐらいがちょうどいい。今回は、できるだけ工程が少ないレシピにしたので、ビギナーの方でも挑戦しやすいと思います。
味わいの決め手となるクリームは、カスタードクリームよりも濃厚なディプロマットクリームに。カスタードクリームに生クリームを合わせたものです。隠し味は、エルダーフラワーの香り。爽やかな香りをほのかに感じてもらえるように温めた牛乳に入れて抽出しています。
生地にはアーモンドを散らしてちょっと洒落たニュアンスを加えて。オーブンで焼き、焼き上がりの熱を冷ましたら、切れ目を入れてディプロマットクリームと八朔を入れます。主役はあくまでも口の中にとろりと溶けていくリッチなクリーム。八朔がいい仕事をする脇役といった感じでしょうか。家で作るとフルーツがフレッシュな状態で食べられるのも嬉しいところ。
やわらかなシュー生地、なめらかなクリーム、フレッシュな八朔が重なり合う瞬間がたまらなくて、ついつい2個目に手が伸びてしまうことに……。なかなかに“甘く危険なお菓子”なのです。
レシピ12個程度
ディプロマットクリーム作りやすい量
・牛乳240ml
・エルダーフラワー(乾燥)ティースプーン2杯程度
・卵黄2個
・きび砂糖35g
・薄力粉10g
・生クリーム150〜180ml (お好みで)
シュー生地作りやすい量
・牛乳50ml
・水50ml
・塩1g
・きび砂糖2g
・バター25g
・薄力粉50g
・全卵1~1.5個 ※Mサイズ目安55g
・アーモンド15g
・柑橘1個 (八朔または文旦のように果肉のしっかりしたものは水分が出ないのでおすすめ)
下準備
・オーブンを200℃に温めておく。
・生クリームを八分立てにし冷やしておく。
・アーモンドを細かく挽いておく。
How to cook
photo:Hiroko Matsubara edit & text:Seika Yajima
キッチンクロス提供:FLUFFY AND TENDERLY
器:フランスアンティーク