& Premium (アンド プレミアム)

Music土曜の朝と日曜の夜の音楽。

音楽家 haruka nakamura


September 28, 2018 今月の選曲家 haruka nakamura

September 28 – October 04, 2018

Saturday Morning

Title.
小さな歌
Artist.
青木隼人
輝かしい朝がきた。
これは新しい一日の始まりなのだ。
今日、これから生まれ変わる。
カーテンをひらいて、太陽の光を迎えよう。
窓を開けて、新鮮な空気を吸い込もう。
花の水を変えよう。珈琲を淹れよう。
いつだってやり直して良いのなら、
今日がその日だってかまわないはずだ。

こころに、小さな歌が流れる。
新しい日々が、はじまった。

アルバム『小さな歌』収録。

Sunday Night

Title.
Go Home
Artist.
Julien Baker
ステンドグラスから西日が差し込む。
なんとも言えない、あたたかなひかり。
手のひらにその温もりを集める。
この教会は、いつも誰もいない。
たまにおばあさんが一人でお祈りを捧げている。
「神さま、どうか全てをお赦しください」

中庭で遊ぶ子供達の声が聞こえる。
修道院の鐘の音が響いた。
日曜の夕べを知らせる鐘。
時計は17時を指している。

宣教師の言葉が最後に流れる、
シンプルなピアノのあの歌。
聖歌のピアノがいつまでも静かに
終わりゆくあの歌。
君が好きだった、あの歌。

家に帰ろう。
教会に別れの挨拶をする。
神さま、どうかいつまでもあの人をお見守りください。

帰り道には、ただ歌が流れていた。

アルバム『Sprained Ankle』収録。


『&Premium』特別編集
『&Music/土曜の朝と日曜の夜の音楽』 好評発売中。

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ミュージシャンやクリエイター、写真家など、音楽好きの“選曲家”たちが月替わりで登場。 土曜の朝と日曜の夜に聴きたい曲を毎週それぞれ1曲ずつセレクトする連載が、初めて一冊にまとまりました。 23人の選曲家が選んだ、週末を心地よく過ごすための音楽、全204曲。 本書のためだけにまとめた、収録作品のディスクガイド付き。 詳しくはこちら

September 21, 2018 今月の選曲家 haruka nakamura

September.21 – September.27, 2018

Saturday Morning

Title.
Was There Nothing?
Artist.
Ásgeir
朝霧が立ち込めている。
山に滞在して三日目。
今日は森の奥にあるという湖へ向かう。
九月とは思えないほど山の朝は肌寒い。
遠くから鹿の鳴く声がする。
湖へ出ると、使い古されたボロボロの
ボートが一艇、
ふらふらと停泊していた。
霧の湖に、ひとつのボート。
星野道夫さんは、
こんな朝に船出をしたのだろうか。
旅立つ時は出来るだけ荷物を持たないように。
本当に必要なものは、
それほど多くはないのだから。
湖には鳥たちの歌声がいつまでも響いていた。
谷から谷へ、
口笛だけで言葉を交わす民族を思い出した。
山に響く旋律の会話。
彼らが愛の言葉を交わす時、
それはどんな音色となるのだろう。
アルバム『In The Silence』収録。

Sunday Night

Title.
Better Day
Artist.
STS9
鎌倉駅から江ノ島電鉄に揺られ、
稲村ガ崎駅で降りれば、そこはもう海だ。 
国道134号線沿いの店に立ち寄り、
カウンターから海を眺める。
夕暮れに浮かぶトワイライトサーファーたち。
江ノ島の先に夕日が沈んでゆく。
古い友とレンタカーで四人乗りをして、
134号を江ノ島に向かった、あの遠い夏。
夕暮れの全てが黄金に輝いていた。
その瞬間、何にでもなれる気がしていた。
カーステから永遠にリピートされていた、
僕らが好きだった曲。
今も心のどこかで鳴り続いている。
僕たちは少しでも、
描いた未来へと近づいたのだろうか。
より良き日々に。
アルバム『Artifact』収録。

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September 14, 2018 今月の選曲家 haruka nakamura

September.14 – September.20, 2018

Saturday Morning

Title.
Intermezzo In A Major, Op. 118, No.2
Artist.
Glenn Gould
目覚めると、森だった。
正確に言えば、
部屋の窓からの風景が全て森なのだ。
たまに滞在する森の中の一軒家。
鹿でも現れるのではないかと、
しばらくベッドで横になりながら緑を見つめる。
朝鳥があちらこちらで挨拶を交わしている。
秋の風が木々を揺らし、
木漏れ日がこの部屋にも流れ込む。
やがて、2階からアップライトピアノ
の音が聴こえてくる。
友人が弾く朝のピアノ。
ブラームスの間奏曲。作品118第2番。
本当は作品117のほうが聴きたかったけれど。
さらに弾いているのがグールドなら
天国なのだけれど、今は、
彼がゆったりと弾く作品118が、
この窓からの光景におそろしく溶け込んでいる。
ブラームスはこんな朝に、
この旋律を書いたのだろうか。
アルバム『Brahms Glenn Gould 10 INTERMEZZI FOR PIANO』収録。

Sunday Night

Title.
Time And Space
Artist.
The Cinematic Orchestra
車は夕暮れの高速道路を走っている。
家々のあかりが灯り出している。
今日は日曜日。おだやかに暮らす人々は、
夕べの食卓を囲む時間だ。
僕らは何処へ行くとも知れずただひたすらに、
日が暮れる高速を西へ西へと向かっている。
車内の会話はさっきのSAから皆無だ。
もう、1時間ほど経過しただろうか。
「昔、好きだったんだ」と彼が言い、
ずっとリピートしている、この曲のせいだろう。
車窓の向こうには夕焼けと街灯のコントラスト。
いつまでも終わらないような、
美しく物悲しい情景。
しかしひっそりと、確実に、
夜は訪れている。
永遠に繰り返される
この曲のリピートを終える頃、
僕らは何処かへ辿り着けるのだろうか。
アルバム『Ma Fleur』収録。

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September 07, 2018 今月の選曲家 haruka nakamura

September.07 – September.13, 2018

Saturday Morning

Title.
Still Crazy After All These Years
Artist.
phonolite
ゆっくりと目を覚ますと、つけっぱなしで寝てしまっていたラジオが部屋に流れている。
時計を探す。カーテンからは午後の光。
身体はベッドに深く、重く沈み込んでいる。
枕元の冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、ゴクゴクと飲む。
ラジオではリクエスト曲が始まった。なんだっけこれ、昔の曲。
たしかサイモン&ガーファンクルの、ポールサイモンのソロ。
でもこの声は女性だし、かなり洒落たアレンジだ。
イントロから堪らない。夏が終わり、秋の訪れを感じさせてくれるアンサンブル。
だんだんと身体に水が行き渡る。
とりあえずシャワーを浴びよう。
週末はまだこれからだ。
アルバム『Still Crazy』収録。

Sunday Night

Title.
Open Book
Artist.
Jose Gonzalez
マッチで部屋にキャンドルを灯す。
そのまま、煙草に火をつける。
マッチを擦った時のリンの匂いがなぜか好きだ。一口目の味わいが変わる気がする。
ソファにどさりと座り、読みかけの文庫本を読む。
灯りが足りないので読書灯も点ける。
この部屋に足りないものはたくさんある。
例えば、あたたかな食卓。気まぐれで愛おしい猫。美しい植物たち。
どれもすぐには叶いそうにない。
今、なにか足せるとしたら、音楽くらい。
優しく時間を包んでくれる男の声が良い。ギターは爪弾くくらいで、何度でも繰り返しリピートできるような。
暗い海辺にぽつりと佇む、灯台のような曲を。
アルバム『Vestiges&Claws』収録。

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音楽家 haruka nakamura

青森県出身。杉本博司「江之浦測候所」の映像音楽を制作。CITIZENの音楽を3シーズンに渡り務め、2018年、100周年記念の映像音楽を手がける。ミロコマチコ、柴田元幸とセッションを重ねる。現在は来年に向けて、新たに開始するバンド編成での音楽を準備中。
www.harukanakamura.com