長田佳子の季節のハーブを愉しむお菓子。

旬のフルーツを贅沢に味わう
「柿とゼラニウムのパイ」 長田佳子の季節のハーブを愉しむお菓子 vol.33December 17, 2022

自然からのいただきものであるハーブの力を取り入れて、心と体に優しく寄り添う「レメディ」のようなお菓子を作る〈foodremedies〉として活動する菓子研究家の長田佳子さん。砂糖にはない甘さやほのかに感じる苦味、鼻をくすぐるいい香り——。ハーブはそのときの心と体の状態によって、五感で感じ取るものが繊細に変化する奥深さを秘めた暮らしに役立つ植物です。そんな季節のハーブを使った長田さんオリジナルのお菓子のレシピを紹介するこの連載。第33回は「柿とゼラニウムのパイ」をお届けします。

This Month's Herbal Sweets

「柿とゼラニウムのパイ」

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好きな具材を包む楽しさが広がる、軽やかなパイ。

パイといえば、たっぷりとバターを使った、こっくりとした甘さを感じる味わいに馴染みがある方も多いかもしれません。けれど、今回作った「柿とゼラニウムのパイ」は生地そのものにバターを使わず、生地の表面に塗るためのバターを使うだけ。そして、砂糖も入っておらず、パリッと焼くために使う粉糖をふりかける程度。

それゆえに、とても軽くて、サクサクと食べられる仕上がりになっていて、「パイ独特の重さから手が伸びない」という人でも軽く食べてしまえる、甘さ控えめな生地が特徴です。

12月は、あと少しで柿の旬が終わりを迎えるタイミング。せっかくなら、もう少し違った食べ方を編み出して、ある種の実験的なお菓子作りを愉しんでみるのはいかがでしょう。柿はサラダやマリネにしてもおいしいので、香りがしっかりとあるゼラニウムとは相性がよく、フィリングにすることで上品な趣に。

口にした瞬間、サクッとした食感のパイ、柿の甘さ、レーズンの酸味、ゼラニウムの華やかな香りが濃密に感じられる奥行きのある味に包まれ、それぞれの素材のいいところが絡み合う特別感に満たされるはず。

家庭でも短時間で簡単にできるパイ生地づくりを覚えたら、中にくるむ具材は、そのときの気分で選んでみると、お菓子作りが一層楽しくなるもの。例えば、お肉をくるんでミートパイにしたり、ジャガイモをくるんでみたり。そうやって、いろいろと試してみることで、自分の好きな食材を詰める楽しさが膨らんでくるものです。食材の組み合わせによって、変幻自在なパイ作り。ぜひ、自分好みのパイを見つけてみてください。

ゼラニウム フウロソウ科、ペラルゴニウム属。高さ1m程度に生育し、花を開花させる多年草。葉や茎からは、ローズのような華やかな香りが漂うため、香水や石鹸などの香り付けに使われることも多い。そうした特徴ゆえに、心のバランスを 整えたいときにも役立つハーブと言われています。葉をガーゼで包み、入浴時に香らせることでリラックス効果も期待できます。
ゼラニウム

フウロソウ科、ペラルゴニウム属。高さ1m程度に生育し、花を開花させる多年草。葉や茎からは、ローズのような華やかな香りが漂うため、香水や石鹸などの香りづけに使われることも多い。そうした特徴ゆえに、心のバランスを整えたいときにも役立つハーブといわれています。葉をガーゼで包み、入浴時に香らせることでリラックス効果も期待できます。

レシピ 3〜4人分 (W18×D8×H7cm) 

【パイ生地 2 個分】
・中力粉 80g
・塩 2g
・ぬるま湯 50ml
・米油 15ml

【フィリング1個分】
・柿 2個(200〜250g程度)
・レーズン 20g
・ゼラニウム 葉2枚程度
・ブランデー10ml

・バター30g
・粉糖 適量
・ゼラニウム 葉2枚程度

下準備
・バターを溶かす
・柿の皮をむき、8等分にカットする
・オーブンを210℃に予熱する

How to cook

1.フィリングをつくる。柿、レーズン、ゼラニウムをブランデーでマリネする。
1.フィリングを作る。柿、レーズン、ゼラニウムをブランデーでマリネする。
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2.生地を作る。ボウルに粉と塩を入れ、ぬるま湯と米油を加えゴムベラでひとまとまりにする。
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3. 台に打ち粉をし、「2」の生地を台の上で捏ね、グルテンが出て伸び縮みするようになってきたら、ラップに包み冷蔵庫で1時間以上休ませる。そのあと、生地を2等分する(一つはラップに包み冷蔵庫で保存し、作りたいときのために取っておく)。
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4. 再び台の上に打ち粉をし「3」の生地を麺棒で大きくのばし、打ち粉をしたオーブンシートに置く。
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5. 表面全体に刷毛でバターを塗ったら、中央に横一列でフィリングを置き、手前と奥からくるむ。
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6.表面にバターを塗り、パリッと焼くためにたっぷりと粉糖をかけてゼラニウムをのせ210℃のオーブンで35〜40分を目安に焼く。 ※柿の汁が出て底が焦げやすいので焼き加減を見ながら上下を入れ替えながら焼く。
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photo:Hiroko Matsubara edit & text:Seika Yajima
ハーブ:まるふく農園 キッチンクロス提供:FLUFFY AND TENDERLY
器:ヨーロッパアンティーク


菓子研究家 長田 佳子

レストラン、パティスリーなどでの修業を経て、YAECAフード部門「PLAIN BAKERY」でメニュー開発、お菓子の製造を担う。2015年に独立。〈foodremedies〉という屋号でハーブやスパイスなどを使ったまるでアロマが広がるような、体に素直に響くお菓子を研究している。著書に『季節を味わう癒しのお菓子』(扶桑社)、『全粒粉が香る軽やかなお菓子』(文化出版局)などがある。2021年7月より登録制による動画配信のお菓子教室を開催。

foodremedies.jp

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