花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」
心弾む「羽子板のしつらい」。花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」 Vol.32February 10, 2022
四季折々に迎える歳時記を、京都の花屋『みたて』が植物を通して表現。一つの作品を通して、京都ならではの生活が見えてきます。
心弾む「羽子板のしつらい」。
藁に餅花をあわせた「雨あられ」。凛とした竹と竹炭と和紙で清浄を祈る「竹炭包み」。木箱に松葉を置き、その上に赤い実を散らした「敷松葉」。『みたて』が作る正月飾りは、それぞれに縁起やいわれがある植物を取り入れながらも、組み合わせや切り取り方にはっとさせられる。さりげなく、そして清々しさを漂わせるものばかりだ。
2018年の新春に提案するのは、つくばねに赤と黒の漆をまとわせ、台形の小箱に納めた「羽子板のしつらい」。丸い実から4枚の葉が飛び出し、まるで羽根つきの羽根のようであることから、その名がつけられたつくばね。正月を思わせる可愛らしい形は漆に包まれて華やかさを増し、その造形美を際立たせている。
添えられたのは木工職人の手による、端正な木箱。邪気をはねのけ厄払いを祈願した、羽子板を思わせる形に仕立てた。つくばねと共に飾るのはもちろん、来年のためにと丁寧にしまう時間さえ楽しませてくれるものだ。おせちのための重箱や、節句の人形など年に一度のために用意される道具や飾りは、日本人の美意識を強く感じさせてくれるもの。飾って愛でる間はもちろん、目に触れない時間もまた、手元にあるということで心を豊かにしてくれる新春のあしらいなのだ。
photo : Kunihiro Fukumori edit & text : Mako Yamato
*『アンドプレミアム』2018年2月号より。
花屋 みたて
和花と花器を扱い、四季の切り取り方を提案する京都・紫竹の花屋。西山隼人・美華夫妻がすべてを分担し営む。