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金工作家・長谷川竹次郎の銀のアクセサリー。写真と文:安藤夏樹 (編集者) #1May 06, 2026

「やっと会えたね」。
ある小説家がかつてのスーパーアイドルに会った際、最初にかけたこの言葉を、ぼくはその白髪の男性に向けた。心の中で。その男性とは、名古屋で活躍する金工作家、長谷川竹次郎さん。知り合いの工芸作家の食器棚にあった竹次郎さん作の盃を見た瞬間、その魅力に取り憑かれた。ところが、この竹次郎さん、作品が全然売られていなかった。当時は個展も2年に一度、しかも場所は名古屋。さらに、その個展にもご本人はほとんど顔を見せないとのことだった。

そんな竹次郎さんが富山の樂翠亭(らくすいてい)美術館で展覧会を開くと耳にしたのは2018年。初日にはご本人もいらっしゃると聞き、僕はすべての仕事をキャンセルして駆けつけた。美術館での展示は、それはもうすばらしいの一言。竹次郎さんは噂に違わず無口だった。でもけっして無愛想なわけではない。言うならば仙人のようなひと。以降、ふたものや盃、匙など、たくさんの作品を購入したのだが、どれもが使っていて気持ちがいい。というか、気分が上がる。なかでも常に身につけているのが、アクセサリーだ。

そもそも長谷川家は尾張徳川家の御用鍔師(つばし)というお家柄。明治以降は茶道具の世界でよく知られている。竹次郎さんはその当代であり、代々続く「一望斎」という名前も持っている。一望斎の仕事はもちろんのごとくすばらしいのだけれど、僕が特に好きなのは「竹」と銘の入った竹次郎さんがライフワークで作る作品のほう。それは自由そのもので、ご自身が愛する遺跡や動物が指輪の上にのっていたりする。

熊のモチーフがついたブレスレットは特にお気に入りで、風呂に入る時も、寝る時もだいたいつけている。指輪はいろいろ持っていて、気分によって付け替える。つけていると、だいたい、それを見た誰かに声をかけられる。自慢でも、自己満足だけでもなく、コミュニケーションツールにもなる指輪。武士が刀の鍔で遊び心を満たしたように、僕はこの指輪でそれをやっているのかもしれない。

気分が上がるメイド・イン・ジャパン。金工作家・長谷川竹次郎の銀のアクセサリー。写真と文 安藤夏樹 (編集者) | 竹次郎さんのふたもの(写真手前)。一枚の銀の板から叩き出した馬と少年は、プロでもどのように作るのか理解できないほどの技術力。
竹次郎さんのふたもの(写真手前)。一枚の銀の板から叩き出した馬と少年は、プロでもどのように作るのか理解できないほどの技術力。
気分が上がるメイド・イン・ジャパン。金工作家・長谷川竹次郎の銀のアクセサリー。写真と文 安藤夏樹 (編集者) | 竹次郎さんによる盃と匙。毎日の晩酌が楽しくなる。
竹次郎さんによる盃と匙。毎日の晩酌が楽しくなる。
気分が上がるメイド・イン・ジャパン。金工作家・長谷川竹次郎の銀のアクセサリー。写真と文 安藤夏樹 (編集者) | 竹次郎さん作のアクセサリーは近年、ファッション関係者からも注目が集まっている。
竹次郎さん作のアクセサリーは近年、ファッション関係者からも注目が集まっている。

編集者 安藤夏樹

安藤夏樹©︎Hiroh Kikai | ©︎Hiroh Kikai
〈プレコグ・スタヂオ〉代表。日経BPにてラグジュアリー誌編集長を務めた後、2016年に独立。企業のオウンドメディアや広告の制作に加え、独自に出版事業も行う。主な出版物に『熊彫図鑑』(東京903会)、『たしかに熊だが』(著・いなもあきこ)、『サカマキマンガ』(著・坂巻弓華)など。北海道の木彫り熊の魅力を伝える〈東京903会〉を主催。ギャラリー活動も行っており、2026年1月には伊勢丹新宿店1階ザ・ステージにてイベント「プレコグのおもちゃ箱」を開催した。様々なものを買い散らしており、「散財王に俺はなる!」がキャッチフレーズだが、いまだ道半ば。

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