小林エリカの文房具トラベラー

小林エリカの文房具トラベラー vol.17「クリップ」&STATIONERY / November 30, 2021

小林エリカ 文房具トラベラー
小林エリカ 文房具 トラベラー イラスト クリップ

 昨今動物を象ったものなどバリエーション豊かなゼムクリップであるが、私としてはあのごく一般的曲線状のものが好きだ。シンプルで、機能と美が実に見事に一致した形状ではないか!?とググってみたら1890年頃のイギリスの〈ゼム・マニュファクチュアリング・カンパニー〉の発明らしい。一説には、ノルウェー人のヨハン・バーラーが発明者として特許を持っているそうで、第二次世界大戦中ナチスドイツ占領下のノルウェーでは胸ポケットに、かのクリップを留めるのが抵抗運動のシンボルだったという逸話も。やっぱり、私のクリップに対する直感は間違っていなかったと意味不明な確信を深めるのであった。
 ところで同じクリップとはいえ大小様々、ダブルクリップやVクリップ、山型クリップ、色々あるものなんですね。にしても、紙を束ねてクリップで留めた途端に訪れるあの小さな達成感は何だろう。もしやあれは画竜点睛でいうところの、竜の目なのかもしれない。白い紙の束はクリップなしには目を欠いた竜の如し。と、書類の端の目玉クリップとぴたりと目が合った。

左/〈HAY Mini Market〉の文房具コーナーでセレクトされていた山型クリップ。右上下/ハワイはオアフ島チャイナタウンの程近くにある巨大文具スーパー〈FISHER HAWAII〉に大興奮。買い漁ったゼムクリップとダブルクリップ。シルバーが定番ですがあえてゴールドを。
左/〈HAY Mini Market〉の文房具コーナーでセレクトされていた山型クリップ。右上下/ハワイはオアフ島チャイナタウンの程近くにある巨大文具スーパー〈FISHER HAWAII〉に大興奮。買い漁ったゼムクリップとダブルクリップ。シルバーが定番ですがあえてゴールドを。

edit : Kisae Nomura
※この記事は、No.18 2015年 6月号「&STATIONERY」に掲載されたものです。


作家・マンガ家 小林 エリカ

シャーロック・ホームズ翻訳家の父と練馬区ヴィクトリア町育ちの四姉妹を描いた『最後の挨拶 His Last Bow』(講談社)発売中。2021年夏、はじめての絵本『わたしは しなない おんなのこ』(岩崎書店)が発売。

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