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Book

KAMOSHIKASYOTEN カモシカ書店


選・文/CAVA Books / December 13, 2018 本屋が届けるベターライフブックス。『フィリップ・ワイズベッカー作品集 HAND TOOLS』フィリップ・ワイズベッカー著(888ブックス)

IDEAL

 大工道具ほどディテールの違いで大きく名前が変わるものはない。それに存在意義が材料と目的との関連だけで構成されるので、道具の名前だけがいつのまにか横文字になっているという「風化」が起こりにくい。
 パリとバルセロナを拠点に活躍するアーティスト、ワイズベッカーの平面的な絵は、一度目に張り付いたら、描かれた道具の名前と一緒になって剥がれることがない。彼の創造は、僕が小学校の図画工作室で初めてみる油臭い道具をいじりまわしたのと同じ動機だと思う。僕は大工仕事が好きで、ひとつ道具を買うことで驚くほど仕事が捗ることを何度も経験した。そうやって道具の名前をひとつずつ覚えていく。道具を正しい名前で呼ぶこと、それは「作る」ということの基礎に含まれているのだ。


選・文/カモシカ書店 / December 06, 2018 本屋が届けるベターライフブックス。『魯山人味道』北大路魯山人 著 平野雅章 編(中公文庫)

魯山人

 正直に言って、北大路魯山人はとっつきにくい。論理や言葉は平易だが、つまるところ「君は天才か、そうじゃないか」を問われ続け、僕は天才ではないな、と当たり前のことを自覚した瞬間突き放されるからだ。
 本書ではサンショウウオやナマコ、カエルといった珍味の味わい方を綴り、下関のフグを比肩すべきなにものもないと絶賛するが、最終的には個人の好みではないだろうか。
 だが魯山人の極めて野生的な論説には常に美しい裏地がある。器や鍋、包丁といった道具に対して繊細さを要求する強い美意識である。それは人に対しても向けられ、美味いものを出したければその人のことを知るしかないということになる。道具にこだわることと、自分を信じ、人を大切にするのは実は全く同じ苦しみがあるのかもしれない。


選・文/カモシカ書店 / November 29, 2018 本屋が届けるベターライフブックス。『柳宗理 エッセイ』柳宗理 著(平凡社)

柳宗理

 大学を出て服作りの勉強をしていたときに「ものづくり」とは何か、そしてその向かうべきところがわからなくなった時に柳宗悦の美学に出合い、心酔した。
 柳宗悦から柳宗理への時代というのは手工業から機械工業への抗えない時の圧力によってものづくりが変形、変質していく過程である。どんなに手仕事を尊重しても僕らの生活が手仕事のものだけで成り立つことはもうあり得ない。それほどに僕らは機械工業に深入りした。本書の章「新しい工藝・生きている工藝」で数々の機械工業製品の名品を語ってみせた柳宗理は現代において美を諦めないどころか、さらにもう一歩深め「過去及び現在は未来のためにある」と言い切った。F・アーンスト・シューマッハー『スモールイズビューティフル』と合わせて読みたい。


選・文/カモシカ書店 / November 22, 2018 本屋が届けるベターライフブックス。『人間の土地』サン=テグジュペリ 著 堀口大學 訳(新潮文庫)

人間の土地

 「星の王子さま」のサン=テグジュペリのエッセイ集。『カモシカ書店』のカモシカが出てくる私の最も大切な一冊。
 命懸けの飛行機乗りたちの挑戦の気高さと、人類で彼らが初めて目撃した空からの景色の神秘を詩的な言葉で美しく描き出す。不時着した砂漠での死を目前にした体験では、心配する家族や友を思い起こしては、その悲しみに対して「ぼくらこそが救援隊だ」と言い放ち希望を繋ぐ瞬間は心が震え、どんなときにも生きる勇気をくれる。飛行機を「分析の道具」と銘打って、新しい玩具がおもしろくってたまらない時代の飛行機の未来を予言する。曰く、完成とは付与すべき何物もなくなるときではなく、除去すべき何物もなくなった時に達せられる、と。


KAMOSHIKASYOTEN カモシカ書店

文学、音楽、映画、アートなどを中心に選書。自家製のスイーツやドリンクを楽しみながら、本を選ぶ豊かな時間を過ごせる。
大分県大分市中央町2-8-1
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