Music

土曜の朝と日曜の夜の音楽。 今月の選曲家/Maika Loubté vol.1May 05, 2023

May.5 – May.11, 2023

Saturday Morning

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Title.
Fingerbib
Artist.
Aphex Twin
土曜日の朝は、余裕の気分で迎えたいですよね。まだ朝じゃん、という感じで。週末が始まったばかり。いぇーい。二度寝もいいですね。Aphex Twinの「Fingerbib」は、休日の朝、眠気と余裕に満ちたベッドの中で聴くと頭と心が整いそうな大好きな曲です。印象派の名曲っぽい音符の響きが、お布団景色にぴったりだと私は思います。シンプルで奥行きにスペースがたくさん、ストリングスは最小限の音でどこまでもイメージが広がります。パジャマはなにも締め付けないし、布団は最高の巣で、いつまでも守ってくれる。お腹すくまで寝ていよう。というような……。ピッチが揺れるシンセサイザーの音色や、カセットデッキを通して録音したという骨太でローファイなビートは、細微な不安定さでアナログ的な人間くささがあって、自分の音づくりにも大きく影響を受けました。ずっと前から思っていることですが、ジャケットとこの美しい音のギャップは、照れ隠しのような気持ちの現れだったりするのだろうか。
アルバム『Richard D.James Album』収録。

Sunday Night

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Title.
目覚めよ、と呼ぶ声あり BMW645
Artist.
J.S.Bach
タイトルからしてどうして日曜の夜なのという感じですが。数年前、某大型家具店に電話で問い合わせる用事があって。その保留音で流れてきたとたん、「なんといい曲」と衝撃が走り、後日クラシックに熱い父親に鼻歌を聴かせ、これは何かなと尋ねて辿り着いたのでした。主題となるメロディーが繰り返される安心感。変化しながらも陽はまた昇り朝がくるってことを連想します。人間にとって未来を展望するのに必要不可欠なプリミティブな仕組みで、それが日常に対する安心感とつながっている気がします。日曜日の夜は、サザエさんシンドローム(ああまた月曜日が始まる、という鬱屈を喩えた言葉)になる方も多いのかなと思うのですけど。日曜日はまたくるし、毎日新しい朝が始まるし、大丈夫だろうとバロック時代にバッハも思っただろうか。そんなまさか。落ち着くところに落ち着いて、月曜日を迎えたいですね。
アルバム『Bach,J.S.:Cantata BWV140Cantata BWV140,MagniMagnificatBWV243』 収録。



&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

音楽好きの“選曲家”たちが月替わりで登場し、土曜の朝と日曜の夜に聴きたい曲を毎週それぞれ1曲ずつセレクトする人気連載をまとめた「&Music」シリーズの第2弾。 23人の選曲家が選んだ、週末を心地よく過ごすための音楽、全200曲。 本書のためだけにまとめた、収録作品のディスクガイド付き。

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シンガーソングライター/プロデューサー/DJ Maika Loubté

幼少期から10代を日本、パリ、香港で過ごす。高校卒業後、ヴィンテージアナログシンセサイザーに出合う。先進的なエレクトロニック・ミュージックを基軸としながら、テクスチャーをはぎ取ったオーセンティックな「歌」そのものを重要視している。国内外のアーティストとのコラボレーションやサウンドプロデュース、CMへの楽曲提供、リミックス、ナレーションなど多岐にわたって活動中。2020年10月リリースの「Show Me How」がマツダの新型車「MAZDA MX-30」のテレビCMのコラボ曲として大々的にフィーチャーされ、自身もCMに出演した。2021年10月20日に最新アルバム『Lucid Dreaming』を発表。2022年1月にはSpotifyのプログラム「SpotifyEQUAL」マンスリーアーティストに選ばれ、New York Times Squareの看板広告を飾った。2023年、ニュービジュアルと共に新作発表予定。

maikaloubte.com

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