〈御菓子丸〉が一皿で表す、京都、寺社仏閣の風景

南禅寺 天授庵水の青〈御菓子丸〉が一皿で表す、京都、寺社仏閣の風景 vol.6April 27, 2022

〈御菓子丸〉が一皿で表す、京都、自社仏閣の風景
〈御菓子丸〉が一皿で表す、京都、自社仏閣の風景
京都で和菓子の制作する〈御菓子丸〉が、四季折々の寺社仏閣の風景を、独創的な菓子で表現。京都の風景に思いを馳せたくなる、美しい一皿を紹介します。
水の青 御菓子丸

南禅寺 天授庵
水の青

 臨済宗南禅寺派の大本山である南禅寺。その塔頭、天授庵には枯山水庭園(東庭)と池泉回遊式庭園(書院南庭)の2種類の庭がある。新緑が美しいこの季節には青紅葉が書院南庭の池に映り込み、木の橋を渡れば滝の音がかすかに耳に触れる。瑞々しい青の風景に包み込まれる、この季節ならではの心地よい時間だ。これから夏に向けて生きていく青紅葉の生命力が、その心地よさをつくる正体なのかもしれない。
 対して紅葉は、光合成の役目を終え、冬に向けて葉を落とす準備の時季にみられる風景。一年の終わりに向かって葉が赤く染まる様は美しく、この庭園も秋にはたくさんの人で賑わうそうだが、新緑の静かな庭園もまた味わう価値のあるもの。生き生きとした青紅葉を眺めに、ここへ訪れることをおすすめしたい。
 瑞々しさ、生命力を菓子にするため、形が保てる極限まで柔らかくした寒天菓子の中に、酸味の強いパイナップルの果汁を固めたものや苦味のある夏みかんの果肉を入れた。青紅葉に包まれながら口にしたいのは、こんな爽やかな風味だろうか。

『天授庵』京都市左京区南禅寺福地町86-8 ☎075-771-0744 拝観9時〜16時45分(11月15日〜2月末日は〜16時39分) 無休 拝観料500円

photo : Yoshiko Watanabe
*『アンドプレミアム』2022年6月号より。


和菓子作家 杉山早陽子

1983年三重県生まれ。老舗和菓子店での修業を経て、2006年から和菓子ユニット〈日菓〉として活躍。2014年から〈御菓子丸〉を主宰。

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