〈御菓子丸〉が一皿で表す、京都、寺社仏閣の風景

北野天満宮 氷華〈御菓子丸〉が一皿で表す、京都、寺社仏閣の風景 vol.3February 03, 2022

〈御菓子丸〉が一皿で表す、京都、自社仏閣の風景
〈御菓子丸〉が一皿で表す、京都、自社仏閣の風景
京都で和菓子の制作する〈御菓子丸〉が、四季折々の寺社仏閣の風景を、独創的な菓子で表現。京都の風景に思いを馳せたくなる、美しい一皿を紹介します。
北野天満宮 氷華

北野天満宮
氷華(ひょうか)

 全国天満宮の総本社である北野天満宮。2月には約1500本、約50種の梅が咲き誇る梅苑が公開される。その梅について、菅原道真公が詠んだとして知られる和歌がある。「東(こち)吹かば にほひをこせよ 梅の花 主(あるじ)なしとて 春を忘るな」。春風が吹いたら、匂いを(京から太宰府まで)送っておくれ、梅の花よ、と梅に呼びかけるような想いを描いた一首だ。それほどにこの香りは人の記憶に残り、春を待つ心をかきたてる様子が窺える。
 また、いち早く春を告げる花として愛でられる梅は「百花の魁」といわれ、厳しい寒さの中にも花を咲かせる強さの象徴としても知られる。
 この凛とした冬の空気に包まれて咲く梅を表現するべく、冬に熟すフユイチゴを紅梅に見立てた。本来、フユイチゴは夏に熟すが、冬に熟すことからフユイチゴと名付けられ、寒い中にこの野イチゴを見つける喜びはどこか梅の花を見つける喜びにも似ている。シャリッと冷たい空気のような食感を頭の中で描いてもらえるよう、琥珀糖をできる限り薄く仕上げ、紅梅を中に閉じ込める。梅の記憶を写したようなお菓子が出来上がった。

梅苑は例年2月初旬〜3月下旬公開(有料)。▽『北野天満宮』京都市上京区馬喰町 ☎075-461-0005 参拝9時〜17時 参拝無料

photo : Yoshiko Watanabe
*『アンドプレミアム』2022年3月号より。


和菓子作家 杉山早陽子

1983年三重県生まれ。老舗和菓子店での修業を経て、2006年から和菓子ユニット〈日菓〉として活躍。2014年から〈御菓子丸〉を主宰。

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