〈御菓子丸〉が一皿で表す、京都、寺社仏閣の風景
松の木を見上げた先の、青空に漂う雲。
―京都・紫野 今宮神社―〈御菓子丸〉が一皿で表す、京都、寺社仏閣の風景 vol.16April 27, 2023
京都で和菓子を制作する〈御菓子丸〉が、四季折々の寺社仏閣の風景を、独創的な菓子と文とで表現。京都の風景に思いを馳せたくなる、美しい一皿を紹介します。
今宮神社
松雲
京都市北区にある今宮神社は、バスや車の交通量が多い道路沿いに立地し、この界隈に住む人にとっては日常の風景に溶け込む神社だ。観光客で溢れる寺社仏閣の横の小道を入れば、誰かの普段の生活の風景がある。そんなふうに、ハレとケが当たり前のように隣り合っているのが、京都の街の面白さのひとつであると思う。
鮮やかな朱の門をくぐると、それとは対照的に静かな境内が広がり、穏やかな空気が流れている。境内の中心にひときわ高く聳え立つ松がとても印象的で、青空までの視線を導くように上に向かってぐんぐんと伸びている。寺社仏閣にある松といえば、ぐねぐねと曲がりながら低く広がるイメージがあるが、これほどまでに高い松を見かけることは少ない。境内が広く開放的に感じるのは、この松の佇まいによるものかもしれない。
松と青空の風景を写すように、雲の菓子を作ることにした。卵白と寒天という、とてもシンプルな素材でできたその菓子は、雲の食感を楽しんでもらうためのもの。松葉を刺せば、今宮神社の境内からの景色が皿の上に現れる。
正暦5(994)年に疫病を沈めるため行われた御霊会に起源を持つ。▷ 『今宮神社』京都市北区紫野今宮町21 ☎075-491-0082 拝観自由 無休
photo : Yoshiko Watanabe
*『アンドプレミアム』2023年6月号より。
和菓子作家 杉山早陽子
1983年三重県生まれ。老舗和菓子店での修業を経て、2006年から和菓子ユニット〈日菓〉として活躍。2014年から〈御菓子丸〉を主宰。