〈御菓子丸〉が一皿で表す、京都、寺社仏閣の風景
西本願寺 黄金雪(こがねゆき)〈御菓子丸〉が一皿で表す、京都、寺社仏閣の風景 vol.01 / November 26, 2021
京都で和菓子の制作する〈御菓子丸〉が、四季折々の寺社仏閣の風景を、独創的な菓子で表現。京都の風景に思いを馳せたくなる、美しい一皿を紹介します。
西本願寺
黄金雪(こがねゆき)
西本願寺にある銀杏の木は高さ約12mで、幅は25mほどの大木。低い位置から枝が横に伸び、根っこを天に広げたような形から「逆さ銀杏」の名で親しまれている。樹齢はおよそ400年。1788年の天明の大火の時には、木から水を吹き出して大火の前に立ちはだかったという話も伝えられ「水吹き銀杏」とも呼ばれる。御影堂門にかかる金色の菱灯籠を反射するように葉が染まり、黄金色が目の前に広がる景色はとても鮮やかだ。
思い出すのは、浄土真宗で読まれる経の一節。「その仏国土には、絶えず美しい音楽が流れている。黄金を大地として、昼夜にそれぞれ三度ずつ、天から曼荼羅華の花がふりそそぐ」。銀杏の葉が落ち地面を染める様は、黄金の大地を思わせる。
この季節、殻を破った銀杏の実もまた美しい黄色に。菓子の素材にして、黄金の大地に降る雪を表現した。もっちりとした食感を残すように煎り煮した銀杏をハチミツ入りの蘇(古代チーズ)で包み、同じく銀杏をパウダーにしてまぶす。美しい極楽浄土の風景を想像しながら、冬のはじまりにこの醍醐味を味わってほしい。
逆さ銀杏が色付くのは11月末〜12月上旬。▽『西本願寺』京都市下京区堀川通花屋町下ル ☎075−371−5181 拝観5時30分〜17時 参拝自由
photo : Yoshiko Watanabe
*『アンドプレミアム』2022年1月号より。
和菓子作家 杉山早陽子
1983年三重県生まれ。老舗和菓子店での修業を経て、2006年から和菓子ユニット〈日菓〉として活躍。2014年から〈御菓子丸〉を主宰。