真似をしたくなる、サンドイッチ

自宅で作れるレシピも特別公開。 材料は4つだけ、シンプルなクロック・ムッシュ。January 05, 2024

サンドイッチをこよなく愛するパリ在住の文筆家、川村明子さん。『&Premium』本誌の連載「パリのサンドイッチ調査隊」では、パリ中のサンドイッチを紹介しています。
ここでは、本誌で語り切れなかった連載のこぼれ話をお届け。今回は、本誌No122に登場した『ビストロ・デ・トゥルネル』で惜しくも紹介できなかったサンドイッチの話を。

具材を分析した精巧なスケッチを毎回ご紹介。今回描かれたクロック・ムッシュは、目に見える材料が、ハムとチーズに食パン、と至極シンプル。川村明子 サンドイッチ
具材を分析した精巧なスケッチを毎回ご紹介。今回描かれたクロック・ムッシュは、目に見える材料が、ハムとチーズに食パン、と至極シンプル。

噛んだそばから、バターがにじみ出す。

焦がしバターまではいかないけれど、その手前くらいに火を通したバターの香ばしさが、決め手。サンドイッチ 川村明子
焦がしバターまではいかないけれど、その手前くらいに火を通したバターの香ばしさが、決め手。

本誌No122の「サンドイッチ調査隊」で紹介した『ビストロ・デ・トゥルネル』のクロック・ムッシュ。目に見える材料は、ハムとチーズに食パン、と至極シンプルだ。ところが、香ばしそうな見た目そのままに軽やかな歯触りではあるものの、決して、味わいがさっぱりしているわけではない。鍵を握るのは食パン。噛んだそばから、バターがにじみ出るのだ。そう、材料はもう一つ。バター。どこにも姿は見えないけれど、潜んでいる。それも、たっぷりと。

自宅で作れるレシピも。

今回は、シェフにレシピを教えてもらった。レシピ、といっても箇条書きにするほどのプロセスはない。でも、各素材の分量が、何よりも、そのおいしさを紐解いてくれる。

[材料]
・薄切りの食パン 2枚
・ハム 60g
・コンテ 60g
・無塩バター 30g

店では、近所のブーランジュリーから買う食パンに、昔ながらの製法を用いてパリ市内で作られるハム『ジャンボン・プランス・ドゥ・パリ』、そして18か月熟成のコンテチーズを細かく削って、挟む。

では、バターはどこに使うの?

中には挟まない。パンに塗るわけでもない。焼くときに、使う。こんがり焼き色をつけるため、片面に半量のバターを投入する。食欲をそそる色になったら、ひっくり返し、残りの半量を使って、また色良く焼く。店では鉄板で焼いているが、家庭ではフライパンで問題ない。気をつける点は、焼き過ぎ。パンが乾いてしまっては台なしだ。外側はカリッと、中はしっとり仕上げる。

材料は本当にシンプル。上から見ると、それほどのボリュームを感じないが......。実は、結構な量です。サンドイッチ 川村明子
材料は本当にシンプル。上から見るとそれほどのボリュームを感じないが......。実は、結構な量です。

食パンは、特別リッチな生地のものでなくて良いと思う。日本で一般的なサンドイッチ用スライスくらいの厚みに切ればOK。実際に食べると、パン全体の3分の2くらいの領域にバターが染み込んでいるような印象だ。それこそが、ベシャメルソースを加えるよりも、ずっとグルマンな味わいを生み出している。そして、できることなら、ハムとチーズは、しっかりした持ち味のものを選びたい。
複雑な手順はどこにもないので、和の食事を堪能し続けたお正月明けや、新年の集まりなどの機会に、ぜひお試しを。2、3口で満足できて、アペリティフのお供にもぴったりです。ただ、焼くためだけに使うバターの分量には、最初はちょっと驚くかもしれません。だとしても、怖気付かず、惜しみなく。ポイントです。

6 rue des Tournelles 75004 ☎︎01-57-40-99-96 19:00〜23:00 月休
6 rue des Tournelles 75004 ☎︎01-57-40-99-96 19:00〜23:00 月休 


文筆家 川村 明子

パリ在住。本誌にて「パリのサンドイッチ調査隊」連載中。サンドイッチ探求はもはやライフワーク。著書に『パリのパン屋さん』(新潮社)、『日曜日は、プーレ・ロティ』(CCCメディアハウス)などがある。Instagramは@mlleakiko。Podcast「今日のおいしい」も随時更新。朝ごはんブログ再開しました。

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