生命力溢れる蘇鉄が連なる、『MOMOTARO JEANS KYOTO』の庭。ひみつの坪庭コレクション vol.13January 03, 2025

京都の店々に密やかに備わる坪庭は、この街に暮らす人々の美意識を象徴するような場所。京都に出かけたら見に行きたい、小さくも美しい庭を紹介します。

　かつての古美術商の店舗兼住居。その築90年を超える町家は、建築家・青木淳と品川雅俊による建築設計ユニット・ASの手により、巨大なショーウィンドーへと仕立てられた。主役となるのは岡山県児島で育まれた、日本の伝統技術と職人技が凝縮するジャパンデニムだ。古い織機が絶え間なく動く工場と、閉められたままの町家を目にしたASは、飾らない美を備える用途に実直な空間を作ることに決めたという。「特濃-TOKUNO BLUE」と名付けられた深い藍色のデニムは、自然光のもとで色を見極めることが重要となる。試着室に庭が備えられたのは必然の成り行きだった。
　庭に植えられたのは生命力溢れる蘇鉄。児島にある豪邸からインスパイアされ、瀬戸内の空気を伝えるべく選ばれた。店内から眺めれば、鮮やかな緑が印象的な坪庭。ところが試着室の中に入れば雰囲気は一変する。鏡張りの壁面や扉に映る蘇鉄の姿は無限に続き、万華鏡の中に迷い込んでしまったかのよう。視点の移動でするりとアートが現れる、仕掛けも楽しみたい庭なのだ。