小林エリカの文房具トラベラー
小林エリカの文房具トラベラー vol.08「フォルダ」&STATIONERY / August 19, 2021


デスクトップに散らばった書類やファイルがボーンという音と共にフォルダの中へみるみる収まってゆく様は、快感以外の何ものでもない。偉大なMac、そのフォルダの中へは、いくらだって何だって入るのだ。実世界の片付けもこれほど容易だったらどれほどよかろうに、と考えていたある日、私に必要なのはフォルダであるということに気がついた。油断すると鞄の中にカオスが形成されてしまう我が習性、しかしほら、フォルダさえあれば、こんなにすっきり!
しかし、いままで相対したことのなかったフォルダという存在が、なんとも可愛い、その上便利じゃないか、というのが問題であった。故に我が手元にフォルダは増殖、果たしてどこに何をしまったかが思い出せないという不測の事態が発生中。
気づけば私のフォルダ好きは仮想空間の中でさえ増長して、もはやマトリョーシカ状の入れ子構造を形成しはじめている。
我がフォルダ問題、依然解決してはいないが、いつか私自身の習性がアップデートされるはず、と新規フォルダに手を伸ばしては決まって頭を抱えることになる。

edit : Kisae Nomura
※この記事は、No.9 2014年9月号「&STATIONERY」に掲載されたものです。
作家・マンガ家 小林 エリカ

シャーロック・ホームズ翻訳家の父と練馬区ヴィクトリア町育ちの四姉妹を描いた『最後の挨拶 His Last Bow』(講談社)発売中。2021年夏、はじめての絵本『わたしは しなない おんなのこ』(岩崎書店)が発売。