あの人が大切にしている、暮らしの本。

『森岡書店』代表、森岡督行さんが大切にしている、道具の本。『すぐそばの工芸』August 02, 2023

道具の本1_森岡督行さん すぐそばの工芸 三谷龍二 それはただの食器のはずなのですが、それだけではないもの に育っていたのです。ものは長いあいだ家族とともにあるう ちに、思い出を閉じ込めた写真アルバムのように、ものを超 えた存在になっていた。家族や、自分が生きた時間が詰まった、 かけがえのないものになっていたのでした。

道具一つからでも、よい人生はつくられる。

ちょうど就職して小遣いで器などを買うようになった時期に、木工作家の三谷龍二さんらが〝生活工芸〞を提唱し始めたんです。最初は見た目のデザインから入ったのですが、本などを読んでいるうちに考え方に共鳴するようになって。その集大成がこの本だと思っています。その考え方とは、大雑把に言えば一つ一つの道具を使う時間がよければ、人生そのものがよくなるということ。スプーン1 本でも、この人から買ったとか、家族との思い出といった愛着が加わることで、役割を果たすだけではない大切なものになっていく。大量生産大量消費がすでに立ちいかなくなっているのは周知の事実。その時代に三谷さんのような思想は非常に有効だし、未来の豊かさにつながると思います。

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『すぐそばの工芸』 著 三谷龍二 (講談社) 

Yoshiyuki Morioka

森岡督行 Yoshiyuki Morioka
『森岡書店』代表。山形県出身。『800日間銀座一周』(文春文庫)や『ショートケーキを許す』(雷鳥社)など著書多数。7 月23日まで「渋谷ヒカリエ」にて開催の『ソール・ライター 日本関係蔵書展』のキュレーションを担当。

illustration : Shapre text & edit : Wakako Miyake

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