あの人が大切にしている、暮らしの本。
『ラウンダバウト』『アウトバウンド』主宰、小林和人さんが大切にしている、道具の本。『聖と俗〈新装版〉 宗教的なるものの本質について』August 30, 2023
![小林和人_聖と俗〈新装版〉 宗教的なるものの本質について_両空間の間にある閾は、俗と聖との二つの存在様式の懸隔をも表わしている。閾は二つの世界を分離する柵であり、境界線、限界であると同時に、これらの世界が相会し、俗なる世界から聖なる世界への移行が行なわれ得る逆説的な場所である。 小林和人_聖と俗〈新装版〉 宗教的なるものの本質について_両空間の間にある閾は、俗と聖との二つの存在様式の懸隔をも表わしている。閾は二つの世界を分離する柵であり、境界線、限界であると同時に、これらの世界が相会し、俗なる世界から聖なる世界への移行が行なわれ得る逆説的な場所である。](https://img.andpremium.jp/2023/07/21104656/06abba4b699cacbaed8014d4de7de9e1.jpg)
2つの領域の"なかだち"としてのもの。
私の一番の関心ごと、ものの役割の重層性についてのヒントがあります。道具という社会的な有用性や意味にひもづけられる存在でも、同時にごく個人的で抽象的な価値をもたらす側面がある。ハサミでも切りやすさだけでなくひんやりとした質感に心がしんと鎮まるというように。この情緒的な働きを"作用"と呼び、即座に結果を求められがちな"機能"偏重の現代だからこそ着目する必要があると思っています。ものが「作用」するのは、ものが"なかだち"としてある領域から別の領域に一瞬でも身を移すことではないかと考え始めたところで、この本と遭遇。なかでも閾が2つの世界を分離する役目であると同時に、それらが相会し、移行を可能にしているという両義性への指摘には深くうなずきました。
![Kobayashi-books](https://img.andpremium.jp/2023/07/21104909/6e8f3522e694a0b72f4aaa2b855acd4c-3.jpg)
『聖と俗〈新装版〉 宗教的なるものの本質について』 著 ミルチャ・エリアーデ 訳 風間敏夫 (法政大学出版局)
![Kazuto Kobayashi](https://img.andpremium.jp/2023/07/21104716/26104391fcbacb376f081a28ce76f3f5.jpg)
小林和人 Kazuto Kobayashi
『ラウンダバウト』『アウトバウンド』主宰。1999年多摩美術大学卒業後、生活用品を扱う店『ラウンダバウト』をオープン。2008年に、手仕事の道具や抽象的な品々を扱う『アウトバウンド』を始める。
illustration : Shapre text & edit : Wakako Miyake