あの人が大切にしている、暮らしの本。

哲学者・永井玲衣さんが大切にしている、心の本。『言葉』August 09, 2023

永井玲衣_言葉_最後まで達することのできない、このしぶとい抵抗が私は好きだった。欺かれ、疲れ果て、分からないようで分かるという曖昧な逸楽を私は味わった。それが世界の厚みだった。「I 読む」より

日常にある問いを見つけ世界の厚みを信じる。

高校時代に出合って哲学の道に進むきっかけになったサルトル。『言葉』は虚構の混ざった自伝で、夢中になって読みました。たとえば、わからない状態は本来であれば苦しいものだけれど、そのしぶとい抵抗が好きだと言っていて、ずっと思っていたことが言語化された気持ちになりました。わかることのほうがむしろ不安で、わからないことのほうが救いであり、それは世界の厚みです。哲学は「そういうものだ」とされることに、「本当に?」と問い探究していくものであり、世界の厚み、奥行きを信じること。それをしぶとい抵抗と表現しています。哲学者は「わからない」を最初に見つけ、誰かと一緒に考えようとする人。自分も日常に溢れるわからなさに対し、人々と思考することを大切にしています。

Nagai-books

『言葉』 著 J-P・サルトル 訳 澤田 直 (人文書院) 

Rei Nagai

永井玲衣 Rei Nagai
哲学者。哲学研究をしながら、学校などで哲学対話のファシリテーターを務める。2021年に初の哲学エッセイ集『水中の哲学者たち』(晶文社)を上梓。集英社読書情報誌『青春と読書』で「問いはかくれている」を連載中。

illustration : Shapre text:Watanuki Akane edit : Wakako Miyake

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