MUSIC 心地よい音楽を。
詩人 菅原敏さんが選ぶ土曜の朝と日曜の夜の音楽。vol.1January 05, 2024
January.05 – January.11, 2024
Saturday Morning

「銀色の朝」は一面の雪なのか、光る湖面や海原なのか。それともいつも通りの街が、ほんの一瞬放つきらめきなのか。昔、誰かと一緒にその色を見た。
お正月の凛とした朝の寒さに色を付けるなら銀色がしっくりくる。お雑煮をすすり、昨年無くしたものと、手にしたものとを天秤にかける。「詮無いことだよ」と年賀状の龍がきょろりと目をむいて言う。「今年は誰にも返事が出せないんだ」と数十匹の龍をまとめて抽出しに仕舞い込む。
今年最初の土曜の朝、街を歩いてひとりでも、かすかな銀色を探し出すためにターンテーブルに乗せる一曲。
アルバム『Silver Morning』収録。
お正月の凛とした朝の寒さに色を付けるなら銀色がしっくりくる。お雑煮をすすり、昨年無くしたものと、手にしたものとを天秤にかける。「詮無いことだよ」と年賀状の龍がきょろりと目をむいて言う。「今年は誰にも返事が出せないんだ」と数十匹の龍をまとめて抽出しに仕舞い込む。
今年最初の土曜の朝、街を歩いてひとりでも、かすかな銀色を探し出すためにターンテーブルに乗せる一曲。
アルバム『Silver Morning』収録。
Sunday Night

昨年最後に見た展示は世田谷美術館、デザイナー・倉俣史朗の展示だった。「日本の言葉に音色というのがある。僕の最も好きな言葉。透明な音の世界に色を見て、感じること」。印象に残った彼の言葉。透明なアクリルに薔薇を閉じ込めたあの椅子を「誕生日に買って!」と言われたことを思い出した(調べたところ、その椅子はデザイン製品として史上最高額の約五千万で落札されたそう)。
日曜の夜に自分が求める音色は深い深い藍色のようで、少し憂鬱、鎮痛剤とアルコールの組み合わせみたいなこの曲が、もう長いこと寄り添ってくれている。
アルバム『Midnight Mood』収録。
日曜の夜に自分が求める音色は深い深い藍色のようで、少し憂鬱、鎮痛剤とアルコールの組み合わせみたいなこの曲が、もう長いこと寄り添ってくれている。
アルバム『Midnight Mood』収録。
詩人 菅原 敏

詩人。2011年、アメリカの出版社〈PRE/POST〉より詩集『裸でベランダ/ウサギと女たち』をリリース。以降、執筆活動を軸にラジオでの朗読や歌詞提供、欧米やロシアでの海外公演など幅広く詩を表現。 近著に『かのひと 超訳世界恋愛詩集』(東京新聞)、『季節を脱いで ふたりは潜る』(雷鳥社)ほか。 東京藝術大学 非常勤。
Photo:Kousuke Matsuki