MUSIC 心地よい音楽を。
詩人 菅原敏さんが選ぶ土曜の朝と日曜の夜の音楽。vol.3January 19, 2024
January.19 – January.25, 2024
Saturday Morning
![](https://img.andpremium.jp/2024/01/17192043/1200x1200bf-60-300x300.jpg)
スプーン一本
落とすようなはずみで
一月の窓から
ふたりの過去が落っこちた
しばらく動けずに
うずくまっていたものの
ゆっくりと立ち上がって
道路に散らばった言葉を
いくつか掻き集めて
小銭と一緒にポケットに
突っ込んだあと
片足を引きずりながら
くるまを拾って
どこかへ行ってしまった
ふたりは窓の下に散らばる
昔のかけらをしばし眺め
黙ってお茶を淹れて
それぞれの部屋に戻った
アルバム『Cheek to Cheek』収録。
落とすようなはずみで
一月の窓から
ふたりの過去が落っこちた
しばらく動けずに
うずくまっていたものの
ゆっくりと立ち上がって
道路に散らばった言葉を
いくつか掻き集めて
小銭と一緒にポケットに
突っ込んだあと
片足を引きずりながら
くるまを拾って
どこかへ行ってしまった
ふたりは窓の下に散らばる
昔のかけらをしばし眺め
黙ってお茶を淹れて
それぞれの部屋に戻った
アルバム『Cheek to Cheek』収録。
Sunday Night
![](https://img.andpremium.jp/2024/01/17192132/1200x1200bb-1-300x300.jpg)
傷を癒すとき僕らは
巣穴の獣みたいにまるくなって
ひとりで夜を迎える
いまはただ目を閉じて眠ること
いくつかの思い出をひきだしから取り出して
ひとりの夜を眠ること
春と夏をいちどきに失ったとしても
傷はそのうちに癒えるだろう
ひとりの夜はじぶんの影に横たわり
ただ眠ればそれでいい
僕らは目を閉じ
人の消えた街に 風だけが走り
すべて信号は青く 空を魚たちが泳ぐ
夜はやさしと 眠りのなか
小さく開けた窓の向こうに誘われる
アルバム『摘んだ花束 小束になして』収録。
巣穴の獣みたいにまるくなって
ひとりで夜を迎える
いまはただ目を閉じて眠ること
いくつかの思い出をひきだしから取り出して
ひとりの夜を眠ること
春と夏をいちどきに失ったとしても
傷はそのうちに癒えるだろう
ひとりの夜はじぶんの影に横たわり
ただ眠ればそれでいい
僕らは目を閉じ
人の消えた街に 風だけが走り
すべて信号は青く 空を魚たちが泳ぐ
夜はやさしと 眠りのなか
小さく開けた窓の向こうに誘われる
アルバム『摘んだ花束 小束になして』収録。
詩人 菅原敏
![](https://img.andpremium.jp/2023/12/26182355/profile2023-300x300.jpg)
詩人。2011年、アメリカの出版社〈PRE/POST〉より詩集『裸でベランダ/ウサギと女たち』をリリース。以降、執筆活動を軸にラジオでの朗読や歌詞提供、欧米やロシアでの海外公演など幅広く詩を表現。 近著に『かのひと 超訳世界恋愛詩集』(東京新聞)、『季節を脱いで ふたりは潜る』(雷鳥社)ほか。 東京藝術大学 非常勤。
Photo:Kousuke Matsuki