〈BIG LOVE〉主宰 仲 真史
March 24, 2017 今月の選曲家 仲真史
March.24 – March.30, 2017
Saturday Morning

2008年頃からそれまでと一転し、新しいものはすべてアメリカから生まれるというロック・シーンにおいて、初めてといってもいいほどの屈辱をこの10年間味わっていたイギリスですが、昨年から新しいバンドがたくさん、しかもアメリカのそれらが持っていないエッジーだらけのバンドが登場し、この2017年にはアメリカに代わって面白いものは全てイギリスから生まれるだろうと思われます。それもこれも2000年前半からサウス・ロンドンの地下にて活動し若者達の支持を集めていたFat White Familyが存在したから……という話は、日本にもいつものように5年後くらいに伝わるはずですが、そのヴォーカリストLias Saudiと恐らくアラフィフのロンドン・バンドThe Eccentronic Research Councilのメンバーが結成したThe Moonlandingzが旬です。彼らのダウナー・ロックでいまのロンドンの若者達はダンス&ダイブと大暴れしているという事実は、これまでのロック・シーンで本当に見た事がないと思う新しい光景です。なんとアルバムにはあのオノ・ヨーコとその息子ショーン・レノンも参加していて、というか彼らはThe Moonlandingzに夢中でだいぶ投資してそうです……。
アルバム『Interplanetary Class Classics』収録。
アルバム『Interplanetary Class Classics』収録。
Sunday Night

というわけで昨年も大変良質なアメリカン・バンド、特に70年代に影響を受けたThe Lemon TwigsやWhitneyなど大人の音楽好きも唸らせるようなオーヴァー・グラウンドで活躍できる新しいロック・バンドがUSAから登場しましたが、2017年に入りそれさえももはや古いと感じさせる若いロック・バンドがイギリスから登場してきています。そのひとつである彼らは3年くらい前に一枚EPを出していてそれはもっと地味なフォーク・サウンドなイメージだったのですが、彼らも時代を感じたのでしょう。ダサいけどどこか醸すブリティッシュ・インディの香りがそれまでのものを特別とし、気分的にはイギリスというだけでWhitneyとかを凌駕していると見た女性ドラマーの素朴さでまた泣ける、という良いプロデューサーとかがついたら化けそうな注目株です。
アルバム『Good Dreams』収録。
アルバム『Good Dreams』収録。
『&Premium』特別編集
『&Music/土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ 』 好評発売中。

March 17, 2017 今月の選曲家 仲真史
March.17 – March.23, 2017
Saturday Morning

スウェーデンから久々にインディ頼りじゃないインディ・バンドHaterのデビュー・アルバムから。北欧のポップは雰囲気に甘えたものが多くそれはそれで楽しめるのですが、彼らは久々に単純に良いメロディメイカーというだけではなく、同じ北欧であればThe RADIO DEPT.同様の“センス”という言葉だけでは片付けられない魅力を醸す、つまりそれはそのあの……“胸キュン”なのかもしれません。いまどき胸キュンなんて言葉は死語なのでしょうが、青春は恋人がいなくてもいつでもどこでもいつになってもあるものなのだ、と気付かせてくれ、そしてひとりでもふたりでも、結局ひとりでも前を向いていける気になるレコードです。
アルバム『You Tried』収録。
アルバム『You Tried』収録。
Sunday Night

ついに出た。去年の年末くらいから音源はアップされていたのですがコレは久々にブツとして欲しいと思わせる、アメリカのアンダーグラウンド・エクスペリメンタル・シーンからフロアへ向かった男女2人組 Peaking Lightsの楽曲になんとクロエ・セヴィニーが参加した曲がついに12インチ・レコード化です。恋人だったハーモニー・コリン脚本、ラリー・クラーク監督の90年代の金字塔映画『キッズ』でデビューしてから、パルプのジャーヴィス・コッカーや2000年代初頭のエレクトロ・クラッシュ・シーンに体当たりして散ったロンドンのA.R.E.ウェポンズのマット・マコーレーなど、男選びが完璧な彼女はいつまで経ってもカルチャーに対しての姿勢はブレないのだ、と証明した永遠のアイコン盤です。
アルバム『Little Flower』収録。
アルバム『Little Flower』収録。
『&Premium』特別編集
『&Music/土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ 』 好評発売中。

March 10, 2017 今月の選曲家 仲真史
March.10 – March.16, 2017
Saturday Morning

ニューヨークのアンダーグラウンド・アヴァン・ファンク・ロック・バンドGuerilla TossのメンバーSimon Sheldon Hanes率いる14ピース楽団Tredici Bacciのフル・アルバムより。モリコーネや60’s~70’sイタリアン・ムーヴィ〜マカロニ・ウェスタン直系のセクシー・ムード音楽でありながら1980年代のインダストリアル・ノイズ・ミュージックのJohn ZornやLydia LunchそしてJim Foetus等がアプローチしたようなビッグ・バンド〜キャバレー・ミュージックのようなダークネスを感じると思えば、そのJim Foetusが現在のJG Thirlwell名義にてヴォーカルで参加しているではないですか。これこそ時代を超えたネオ・シティのファンタジア・パーティ・ミュージック。
アルバム『Amore Per Tutti』収録。
アルバム『Amore Per Tutti』収録。
Sunday Night

個人的2016年のベスト30枚に入れたかった気もする、元々は米名門Sub Popと契約していたデュオのアルバム『Dead Blue』から。噂の『ツイン・ピークス』の新シリーズの音楽にも参加しているらしいCHROMATICS(ヴォーカルの娘は女優として出演もしているらしい)を少しだけシンセ・ポップ寄りにしながらもジャケットからもわかるどこか暗い、いや完璧に暗い女的触れてはいけないロマンスがここにあるセンチメンタル・ポップ。こちらは映画『ドライブ 2』があれば確実に挿入歌として使われると思います。
アルバム『Dead Blue』収録。
アルバム『Dead Blue』収録。
『&Premium』特別編集
『&Music/土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ 』 好評発売中。

March 03, 2017 今月の選曲家 仲真史
March.02 – March.09, 2017
Saturday Morning

ワイルド・ナッシングや世界的ブレイクとなったマック・デマルコなどを輩出したアメリカのインディ界の老舗レーベル、キャプチャード・トラックスがベストなタイミングで発見したL.A.のシンガーソングライターMolly Burchの1stアルバム『Please Be Mine』からの一曲です。60’sなノスタルジックだけに頼らないアップデートされたインディ感と絶妙なソフィスティケイテッド感が雰囲気だけにならないパーフェクト・フィメール・ポップ。映画『(500)日のサマー』の続編があればぜひ使用してもらいたいです。
アルバム『Please Be Mine』収録。
アルバム『Please Be Mine』収録。
Sunday Night

ここ最近はファッションも音楽もカルチャーはロシア方面が熱いですが、彼らはエストニアの4人組で、これは待望の2017年2ndシングルの曲です。彼らの1st EPは僕の2015年ベストEPですが、そのバンド名はもちろんレオス・カラックスの映画タイトルから拝借したと思うのですが、それ以上にジム・ジャームッシュの近作『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』いやそれ以上に『ツイン・ピークス』然としたミステリアスな世界観でヤング・マーブル・ジャイアンツがゴスになったようなダーク・ポスト・パンク・サウンドを奏でたようなバラッドが逆にこれこそオリジナルティと唸り惚れます。なによりまだ10代のフロント・ガールの冷たい眼が本当に素晴らしいです。
シングル『Sleeprydr』収録。
シングル『Sleeprydr』収録。
『&Premium』特別編集
『&Music/土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ 』 好評発売中。

〈BIG LOVE〉主宰 仲 真史

原宿のレコード・ショップ兼レーベル、BIG LOVEの代表。1990年代初頭から常に欧米のインディペンデント&アンダーグラウンドのロックやエレクトロニックを中心とした新しい音楽を紹介し続けている。レーベルではブレイク前のThe xx、アリエル・ピンクやアイスエイジをリリースし、またショップ・ロゴを手掛けるのはカニエ・ウェストの例のマーチャンダイズを手掛けたL.A.のカリ・ソーンヒル・デウィットであり、彼の日本の初個展を行なったのもBIG LOVEである。