TALK あの人が語るベターライフ。
スウェーデンの人気陶芸家リサ・ラーソンの孫、エミリア・エクマン・ラーソンさんが語る、祖母から学んだ「人生にとって本当に大切なこと」とは。September 26, 2026

スウェーデンを代表する人気陶芸作家リサ・ラーソン。彼女の孫娘が最期の日々を見つめた、創作と家族をめぐるドキュメンタリー映画『リサ・ラーソンがいた時間』が9月18日(金)より公開されている。リサ・ラーソンの孫でもあり、この映画の監督・撮影を手がけたエミリア・エクマン・ラーソンさんが伝えたかったこと、日々大切にしていることを聞いてみた。
カメラを通して近づいた祖母・リサ・ラーソンとの関係性。
エミリアさんが祖母であるリサ・ラーソンさんを撮り始めたのは、2017年。映像制作の学校に通い始めた頃だったという。
「撮影の話をもちかけたとき、リサは『私なんか、見せるものないわよ』と最初はとても恥ずかしそうにしていました。でも、撮り続けることで会う機会が増えていくと、彼女もだんだんオープンになっていって少しずつ彼女との関係も親密になっていきました」
エミリアさんは、幼い頃、クラスメイトは全員祖母のことを知っているのに、私は彼女のことを何も知らないという気持ちを抱いていたという。
「映画を撮影し始めたときと撮り終わってからでは、リサの見え方は全然違っていました。 彼女はいつも『全部OK、私はハッピー』というふうに笑っていたんです。 でも、その直後に『はあ......』とため息をついたりして......。その違和感に、彼女の奥底には何があるのか知りたくなり、撮影を続けていました。私はリサがこんなに深くて、オープンで、モダンな考え方をしている人だとは思ってなかったんですね」
丸くてかわいらしい動物や子どもをモチーフにした陶器作品からは想像がつかないような、手を泥だらけにして粘土を打ち付けるリサさんの姿など、表には見せられていなかった一面も映画の中で描かれている。

創作を通じて乗り越えられた悲しみ。
2024年、リサさんがこの世を去るまでに集まった素材は、約150時間分。映画のストーリーが見えてきたのは、撮影中ではなく、編集室に入ってからだった。
「最初、映画自体の構成について、アイデアがいくつもありました。でも、祖母のことだけではなくて、私と祖母の関係性というのも考えなければならない。皆が知っている、アーティストとしてのリサだけではなく、家族や友人の中でリサがどんな人だったのか、それを残しておくことが、私がこの映画をつくる役割だと思うようになっていきました。また、私は、リサが亡くなる時もそばにいたので、その直後に編集室にこもって、編集者・マチルダ・リンドと『このシーンはもっと悲しく表現しよう、ここは明るくしよう』と考えることに複雑な気持ちがあり、何度も、編集中に部屋を出て泣いていました。それでも、映画をつくっていると、もう一回祖母の声を聞いたり、顔をじっくり見ることができたりして、まだまだ一緒にいられている気がしたんです。彼女の人生を振り返るために必要な時間でした」

祖母から学んだ、「今」を生きる大切さ。
リサさんの夫・グンナルさんとの愛情深い関係性、家族の中でのリサさんの存在、アートとは何か、作品が売れるとはどういうことか。グンナルさんが亡くなった時に、彼の骨壷をリサさんがつくることで悲しみを乗り越えていくシーンをはじめ、祖母と孫娘という関係性の中でしか見えない姿を丁寧に描いた作品となっていた。その中で、エミリアさん自身の人生にも大きく影響を与えたのが、リサさんの「もっとやらなければ」という姿だった。本編の中でも、リサさんがつくったものの気に入らなかった作品を、グンナルさんが拾い集めて自宅の庭に飾った石の壁が登場する。
「リサはいつも『(作りたいものは)これではない、これではない』と言っていました。今の状況にずっと満足していなかったんです。それを見ていて、人生の中で大切なのは、次は満足いくいい作品をつくることではなく、今が大事なのだと彼女から教えてもらいました」

家族との時間と、仕事や創作の時間をどのように両立するか。
現在、エミリアさんは教師として、特別な支援が必要な子どもたちにアートや舞台やダンスを教えながら、ドキュメンタリー映画を制作している。
「教師の仕事をしながら映画をつくるという二つの仕事を持つことで、心地よく生きられるバランスを保っています。私にとって人生で一番大事なことは何かを改めて考えてみると、家族や友人との時間でした。自分の人生に集中した時に、今ここに生きていると一番感じることができるからです。この映画を観た方には、『私は人生において何が大切なんだろう。何が欲しいんだろう。何が大好きなんだろう』と考えてもらえたら嬉しいなと思っています」
リサさんを撮り続けた8年間は、エミリアさんにとって祖母を知る時間であると同時に、自分自身がどう生きたいのかを考える時間にもなっていたという。「言葉にできないこと」「語る勇気をもてないこと」を表現する方法として作品をつくりつづけてきた彼女が、祖母を知るために時間をかけて深く掘り続けた好奇心と、家族、そして創作に対する愛の結晶ともいえる『リサ・ラーソンがいた時間』。リサさんとエミリアさんが映画を通して残した静かな問いに、身を委ねてみてほしい。
For Better Life
「ベターライフのために大切にしていることはありますか?」
&Premiumが大切にしている「Better Life(より良き日々)」。それを叶えるためのヒントをエミリア・エクマン・ラーソン監督に聞いてみました。
「愛を感じながら日々を生きること」:私は今、40人の大人、そして12人の子供と一緒につくったコレクティブハウスに住んでいます。とても近しく大事な人たちと日々一緒にいることができる安全で安心な環境に身を置いていると、愛されていると感じられます。また、今その瞬間を生きている子どもがそばにいるという環境も大切にしています。

エミリア・エクマン・ラーソン Emilia Ekman Larson映画監督
1994年生まれ。リサ・ラーソンの孫。スウェーデン第三の都市マルメを拠点に、ドキュメンタリー映画を中心に活動する。10代前半で初めてカメラを手にして以来、身近な人を撮り続けてきた。芸術・工芸を学んだ後、映画制作と文化プロジェクト運営を学び、映像、アート、演劇、ダンスなど分野を横断して活動。また映画制作と並行して、マルメ文化学校で障がいのある子どもたちとともに、アート、演劇、ダンス活動にも携わっている。
Movie Information『リサ・ラーソンがいた時間』
北欧・スウェーデンを代表する人気陶芸家、リサ・ラーソン。70 年以上にわたり、北欧の“かわいい”を生み出した彼女の創作人生と知られざる素顔、そして 2024 年に亡くなる最期の日々を追いかけた記録を映画化。祖母に憧れ、芸術家としての道を模索し始めたばかりの孫であり、映画監督のエミリア・エクマン・ラーソンが晩年のリサ・ラーソンの姿を見つめたドキュメンタリー。
9月18日(金)よりシネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか全国公開中。
監督・撮影:エミリア・エクマン・ラーソン
出演:リサ・ラーソン、グンナル・ラーソン、マティアス・ラーソン、エミリア・エクマン・ラーソン、フランコ・ニコロシ
























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