〈御菓子丸〉が一皿で表す、京都、寺社仏閣の風景
伏見稲荷大社 白狐餅〈御菓子丸〉が一皿で表す、京都、寺社仏閣の風景 vol.4February 23, 2022
京都で和菓子の制作する〈御菓子丸〉が、四季折々の寺社仏閣の風景を、独創的な菓子で表現。京都の風景に思いを馳せたくなる、美しい一皿を紹介します。
伏見稲荷大社
白狐餅(びゃっこもち)
稲荷山の麓にある伏見稲荷大社。元は農耕の神として、また中世から近世にかけては商売繁昌、家内安全の神としても広く信仰されるようになった。伏見稲荷といえば思い起こすのは狐だが、古来、日本人は狐を神聖なものとして見ており、稲荷神社では白狐が神の使いとして祀られている。様々な謂れがあるなかで、春に山から下りて秋に山に帰る狐の習性と田の神が結びついたという説があり、だから神社で見かける白狐は稲穂をくわえているようだ。
また〝白い狐〞というが、神様の存在と同じく、人の目には見えない透明なものとされている。かつては昔話や落語でも度々登場し、その存在はもっと身近なものだったのだろうが、現在、人の住む場所ではほとんど狐を見かけなくなった。現代の私たちにとっては、まさに狐はすっかり透明な存在となってしまった。
白狐がくわえる菓子として米づくしの餅を作った。もち米を加工した道明寺餅で小豆のこし餡を包み、玄米の粉をまぶす。最後に揚げた稲穂を添える。形はまるで白狐がくわえたかのように。
参道に連なる千本鳥居で知られる古社。▽『伏見稲荷大社』京都市伏見区深草藪之内町68 ☎075‒641‒7331 参拝24時間 無休 拝観料無料
photo : Yoshiko Watanabe
*『アンドプレミアム』2022年4月号より。
和菓子作家 杉山早陽子
1983年三重県生まれ。老舗和菓子店での修業を経て、2006年から和菓子ユニット〈日菓〉として活躍。2014年から〈御菓子丸〉を主宰。