花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」

可憐さをかもす「菊のパレット」。花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」 Vol.41April 14, 2022

花屋<みたて>に習う植物と歳時記 折々に見立てる 京の暮らし

四季折々に迎える歳時記を、京都の花屋『みたて』が植物を通して表現。一つの作品を通して、京都ならではの生活が見えてきます。

可憐さをかもす「菊のパレット」。 みたて

可憐さをかもす「菊のパレット」。

 深まりゆく秋と共に、野山の主役は色づく紅葉となる。赤、黄、橙と穏やかな色合いに包まれるなか、はっとする色使いで主張するのが菊の花だ。菊といえばまずは9月9日の重陽の節句を思うものの、初秋から晩秋までの長きにわたり愛でることができる存在でもある。
 嵯峨にある大覚寺では毎年11月に「嵯峨菊展」が開かれる。平安の嵯峨天皇の時代、境内の大沢池の菊ヶ島に自生していた古代菊を百年以上の年月をかけて改良。糸のように細い花びらを持つ嵯峨菊は現在も門外不出であり、ここでしか観ることのできない優雅な菊となっている。
 また10月から11月にかけ大菊や小菊から古典菊、洋菊まで、千本にものぼる菊がずらりと並ぶのは京都府立植物園で開かれる「菊花展」。清々しい菊の香りのなか、色とりどりの花を眺めて過ごす時間は心沸くひとときだ。
『みたて』が作る秋のあしらいは「菊のパレット」。鮮やかな菊の花を絵の具に見立て、絵皿へ置いた。嵯峨菊を思わせる細い花びらから、小ぶりな花そのまままで、絵皿を彩る姿はただ花を飾るのとは違う華やかさがある。色という観点で菊を切り取り再構築。秋の美を掬(すく)いとったパレットに、新たな美を感じさせる仕立てとなっている。

photo : Kunihiro Fukumori edit & text : Mako Yamato
*『アンドプレミアム』2018年12月号より。


花屋 みたて

和花と花器を扱い、四季の切り取り方を提案する京都・紫竹の花屋。西山隼人・美華夫妻がすべてを分担し営む。

hanaya-mitate.com

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