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Eyesあの人が見つけたモノ、コト、ヒト

ライター・プランナー 瀬高早紀子


April 30, 2018 ”秘密のレストラン” by 子どもたちの先生 瀬高早紀子

2018.04.30

”秘密のレストラン” by 子どもたちの先生

「僕はプリスクール(幼稚園)の先生。レストランで働いたことは一度もない」。告白のような一文から始まるその冒頭だけで、私の心は薄皮をゆっくりと剥かれるようだった。更地から始めた畑作りや春と秋のきのこ狩りがレストランの開店日やメニューを決める。大学を出て間もなくポートランドの自宅や本屋で始めた著者・アンドリューの”シークレットレストラン”は素人であるがゆえの適当さを自認しつつも、それが客人への温かな演出となっているのがページの端々からにじみ出ている。園舎でシェフと化すこともあるのだろう。日常は子どもたちの先生であり続ける姿を想像する。足よりも心が、私を引きづるようにレジへと向かわせていた。久しぶりに衝動買いした料理本だ。

 
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前進の自費出版は売り切れし、出版社から新装された『The Myrtle wood cookbook』(Andrew Barton)
http://www.secretrestaurantportland.com

January 22, 2018 保育園、ない?! 瀬高早紀子

2018.01.22

保育園、ない?!

娘が生まれて初の日本長期滞在。事あるごとに「(アメリカでは)保育園に通ってるの?」と聞かれた。答えはノー。そして、日本のように”行政による、働く(けない)親の子どもが対象の”保育園はない、と付け加えるのが常。アメリカではデイケアが保育園にあたるが、親の就労状況は問われない。だが、費用は一律。日本円にして月10万、15万円はくだらない。出会った親たちは仰けぞって驚き、前のめりで尋ねてくる。「どうやってるの?」と。家族間、友人との援助でやりくり。子ども同伴出勤。前向きな諦め=育児に専念など、様々な試行錯誤がある。娘はもうすぐ2歳。我が家も「働き方改革」が迫られている。

 
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帰省中に通った廃校をリノベした行政による子育て支援施設。アメリカにもこんなのあったら最高だな~。

October 30, 2017 これはコーヒーのフォースウェーブですか。 瀬高早紀子

2017.10.30

これはコーヒーのフォースウェーブですか。

ポートランドのスーパーなどでボトルや缶入りコーヒー飲料が最近、目につく。自家焙煎の店でさえも、すでにボトリングされたラテやモカが並んでいて、なんだか違和感を覚える。いわゆるサードウェーブによって産地や農法が分かる高品質な豆が定着し、淹れ方、淹れたてにこだわるコーヒー文化が生まれたのに、次の流れが結局、大量生産、流通化?! これは”フォースウェーブ”なのだろうか。これまでの流れと逆行しているような気もしなくもないが、彼らの弁では”高品質な出来合い”だから前進らしい。日本の喫茶店文化に憧れを抱き、コーヒーを生業とする夫は、これらの流れに全く興味がなく、自分の店ではそろばんを取り入れようか、と。別の領域で逆行している。

 
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平均価格帯は$4-5。

July 31, 2017 Bartender-in-residene 瀬高早紀子

2017.07.31

Bartender-in-residene

一定期間、特定の地に暮しながら作家達が創作活動にはげむArtist-in-residence。森や海辺がその舞台となりがちだが、ここ『LIKEWISE』は街中のバー。アーティストがカウンターに立ちながら、制作、インスピレーション、展示の場として、ソーシャルかつ親密なそのバーを、実験的に活用する。誰もが「So Portland(ポートランドらしいね)!」と感嘆、または嘲笑するその店に、妊娠、出産以来、2年ぶりに訪問した。特異な形式を維持するのは「物価が高騰する今、正直、容易ではない」と店主の女性。もとは古い車を探していたのに、買い取ったのは店だった、ともつけ加えた。その展開こそ、私には「So Portland」である。

 
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21時までなら子連れもオッケーというのもありがたい。

May 18, 2017 ♥ ♥ ♥! YESでも、NOでもなく。 瀬高早紀子

2017.05.18

♥ ♥ ♥! YESでも、NOでもなく。

「1927年築。コロニアル建築の魅力が点在…」と売りに出された家の敷地内に、数ヶ月後、とってつけたように無機質な家が、二軒も建ち並ぶ。あの触れ込みは無残にも跡形なし。そんな事例が増えるうち、住民達が声をあげた。ヒストリック・ディストリクト(歴史地区)の認可をとり、無秩序な建替え、改築を防ぎ、ポートランドでも特に古き良き景観を誇るそのエリアを守ろうというのだ。そうなったら改増築にはプロセスも費用も増すため、反対派も拮抗する勢い。両者の看板が隣近所でせめぎあうなか、こんな手書き文言に触れた。「私たちは嫌い合っているのではない。この地区を愛しているのには違いない」。ひとり、静かに、拍手した。

 
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“歴史地区”賛成派のとあるお宅。♥まみれ

ライター・プランナー 瀬高早紀子

せたか さきこ/ライター、プランナー。東京を拠点に編集、ライターとして活動したのち、2011年より米国オレゴン州ポートランドにベースを移す。季節限定のかき氷屋に向けてゆっくり再始動中です。
https://sakikosetaka.tumblr.com