花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」
鮮やかに写した「花の天井」。花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」 Vol.40April 07, 2022
四季折々に迎える歳時記を、京都の花屋『みたて』が植物を通して表現。一つの作品を通して、京都ならではの生活が見えてきます。
鮮やかに写した「花の天井」。
沢桔梗(さわぎきょう)、柚香菊(ゆうがぎく)、檜扇(ひおうぎ)、碇草(いかりそう)、女郎花(おみなえし)。細かな仕切りの引き出しに整然と並べられたのは秋の草花。可愛らしさを添える柿や栗など実ものも加わって、20以上の小さな植物を揃えた一期一会のあしらい「花の天井」だ。
インスパイアされたのは平岡八幡宮の天井画。神護寺の守護神として弘法大師が創建、焼失した後に足利義満によって再建された古社で、江戸末期に造営された現在の本殿には、画工・綾戸鐘次郎藤原之信の手による花卉図(かきず)が44面にわたり描かれている。牡丹、椿、紫陽花など極彩色で描かれた折々の花。義満公が花を愛したことから室町時代の再建時にはすでに花卉図があったと伝わり、春と秋に開催される特別公 では今も華やかな姿を見せている。
実は京都にはもうひとつ花の天井がある。それは知恩院の末寺・信行寺。江戸時代の画家・伊藤若冲による167枚の花卉図だ。牡丹や菊から珍
しい植物までが描かれた天井画は、残念ながら非公開。こちらは明治時代に写された版画などで鑑賞する傑作となっている。
木箱の中に作られた天井画の世界。それは描かれた当時へも思いを馳せる、時代を超えて広がるインスタレーションなのだ。
photo : Kunihiro Fukumori edit & text : Mako Yamato
*『アンドプレミアム』2018年11月号より。
花屋 みたて
和花と花器を扱い、四季の切り取り方を提案する京都・紫竹の花屋。西山隼人・美華夫妻がすべてを分担し営む。