花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」
「真菰 (まこも) の馬」と迎える七夕。花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」 Vol.38March 24, 2022
四季折々に迎える歳時記を、京都の花屋『みたて』が植物を通して表現。一つの作品を通して、京都ならではの生活が見えてきます。
「真菰の馬」と迎える七夕。
五山の送り火とともに、旧暦で行われる七夕もまた8月の京都の大切な行事。八坂神社では境内に大笹を立て、参拝者が願いを書いた短冊を掲げる七夕祭が行われる。宮中の伝統行事を今に伝える冷泉家では、供え物をして織姫と彦星を祀り、技芸の上達を祈る「乞巧奠(きっこうてん)」が粛々と執り行われている。菅原道真公が「ひこ星の 行あひをまつ かささぎの 渡せる橋を われにかさなむ」 (彦星が逢瀬を待って掛けるというかささぎの橋を、私にも貸してほしいものだ)と詠んだことから、古くから重要な祭りとして七夕神事が行われてきたのは北野天満宮。織物の町・西陣では古くは七夕祭を棚機祭と書き、機織りの祖神・天棚機姫神(あめのたなばたひめのかみ)の祭りとして広く信仰されてきたのだ。現在では道真公が愛用した書道具を夏野菜や御手洗団子と共に供え、人々の無病息災を祈願している。
『みたて』が笹と共に飾る七夕のあしらいにと仕立てたのは真菰の馬。初秋を表す季語でもある真菰の馬は、すっと長い真菰の葉を束ねて作る七夕や盆の飾りだ。七夕や盆の供え物として作られるのは東日本が中心であるものの、馬と縁の深い上賀茂神社の摂社・久我神社の膝元に店を構える『みたて』ならではの新たな提案。素朴さが笹の緑を際立たせる、七夕飾りとなっている。
photo : Kunihiro Fukumori edit & text : Mako Yamato
*『アンドプレミアム』2018年9月号より。
花屋 みたて
和花と花器を扱い、四季の切り取り方を提案する京都・紫竹の花屋。西山隼人・美華夫妻がすべてを分担し営む。