花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」

瑞々しい「御土居のもみじ」。花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」 Vol.37March 17, 2022

花屋<みたて>に習う植物と歳時記 折々に見立てる 京の暮らし

四季折々に迎える歳時記を、京都の花屋『みたて』が植物を通して表現。一つの作品を通して、京都ならではの生活が見えてきます。

瑞々しい「御土居のもみじ」。

瑞々しい「御土居のもみじ」。

 御土居とは天下統一を果たした豊臣秀吉が、天正19(1591)年に敵からの襲撃や鴨川の氾濫に備え造った土塁のこと。東の鴨川から西の紙屋川、北の鷹ヶ峰から南の九条あたりと、京都の街をぐるりと囲んで造られた御土居。内側を洛中、外を洛外とした御土居には七口と呼ばれる出入り口が設けられ、蔵馬口や丹波口など今も受け継がれる地名にも、その歴史を感じることができる。
 御土居そのものもいくつか残るうちのひとつが北野天満宮の境内、自然林と約350本ものもみじに囲まれた史跡 御土居だ。小倉百人一首の中
に菅原道真公が詠んだ「このたびは 幣(ぬさ)もとりあへず 手向山(たむけやま) 紅葉の錦 神のまにまに」の歌が収められていることから、道真公とも縁あるもみじの木。一面が真っ赤に色づく秋はもちろんのこと、朱塗りの鶯橋とのコントラストが際立つ初夏の姿もまた素晴らしい眺めとなっている。
 その景色を青々とした苔ともみじで表現した『みたて』初夏のあしらい。小ぶりなヤマモミジ、うちわのように丸い形の葉が独特のハウチワカエデ、黄色のカツラ、深い赤に染まるデショウジョウと様々な表情のもみじを使うことで、自然林を思わせる野趣を添えた。陶板の上に世界は広がり、いにしへへと想いを馳せるものとなっている。

photo : Kunihiro Fukumori edit & text : Mako Yamato
*『アンドプレミアム』2018年7月号より。


花屋 みたて

和花と花器を扱い、四季の切り取り方を提案する京都・紫竹の花屋。西山隼人・美華夫妻がすべてを分担し営む。

hanaya-mitate.com

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