小林エリカの文房具トラベラー
メジャー小林エリカの文房具トラベラーvol.24February 08, 2022
恋人と初めて一緒に部屋を借りて、初めて同棲するにあたって、その小さな部屋にぎりぎりダブルベッドが入るかどうか、という逼迫した事態が訪れたことがある。うーん、目視ではかなり際どい。そこで恋人が取り出したのは可愛らしいゾウさんの形をした巻き尺(鼻部分から巻き尺が伸びる1m)で、私が取り出したのが金定規(30㎝)であった。1㎝、いや数㎜の差がダブルベッドの命取りになるこの状況においてなんたること。ゾウさんと金定規を組み合わせてなんとか部屋の横幅を測ってみたもののどうにも心もとない。東京駅駅舎復原工事では煉瓦の目地幅がコンマ3桁で㎜指定されていたんだぞ! というわけでベッドより先に我々に必要なのは正確に測れるメジャーであった。メジャーあれば憂いなし。(しかし金属のシャキーンとしたメジャーはプロっぽくてカッコ良いし完璧なのだが、いつか手が切れてしまうのじゃないかとハラハラするのは私だけ!?)
ところで幸いダブルベッドは無事に収まったが、その部屋からは1年も待たずしてまた引越しする羽目になったのだった。
edit : Kisae Nomura
※この記事は、No.25 2016年 1月号「&STATIONERY」に掲載されたものです。
作家・マンガ家 小林 エリカ
シャーロック・ホームズ翻訳家の父と練馬区ヴィクトリア町育ちの四姉妹を描いた『最後の挨拶 His Last Bow』(講談社)発売中。2021年夏、はじめての絵本『わたしは しなない おんなのこ』(岩崎書店)が発売。