あの人が大切にしている、暮らしの本。
デザインジャーナリスト・土田貴宏さんが大切にしている、道具の本。『エットーレ・ソットサス』August 18, 2023
![土田貴弘_エットーレ・ソットサス_オブジェはリアリティをあらわすのではなく、精神的なもの、美しいもののメタファーであること、そのことをひとびとにしめすためなのである。 土田貴弘_エットーレ・ソットサス_オブジェはリアリティをあらわすのではなく、精神的なもの、美しいもののメタファーであること、そのことをひとびとにしめすためなのである。](https://img.andpremium.jp/2023/07/21003923/e7510cdfe87dd4ab639f2f8295c20168.jpg)
機能だけではない、精神性を満たすデザイン
イタリアのデザイナー、エットーレ・ソットサスの評伝。もともと機能第一主義のモダンデザインに懐疑的な目を持っていた人ですが、1960年代にインドに行ったときに道具と人の関係性を見て、デザインはリアリティ、つまり現実の実用性だけではなく、人間が根源的に積み上げてきた文化や精神性を満たす"儀礼"のためのツールだと確信するんです。例えば水を飲む。紙コップでも道具としては機能するけれど、それが人間の大切な営みにふさわしいのか、と。今の時代も依然としてより安く、役に立つ便利なものが力を持っています。そうした社会のなかでの一つの方向性として、実用だけではない、使い手の人生に意味をもたらすデザインを模索した彼の哲学も、参考になると思います。
![Tsuchida-books](https://img.andpremium.jp/2023/07/21003848/b1627cb615c5a93f50f60f35e255ab87-3.jpg)
『エットーレ・ソットサス』 著 ジャン・バーニー 訳 高島平吾 (鹿島出版会)
![Takahiro Tsuchida](https://img.andpremium.jp/2023/07/21003627/becba9f8f93eba40cd82d0639ba5fb4c.jpg)
土田貴宏 Takahiro Tsuchida
デザインジャーナリスト。1970年北海道生まれ。会社員を経て、2001年からフリーランスとして活動。コンテンポラリーデザインを主なテーマとして、雑誌やWebメディアなどに寄稿。展覧会ディレクションなども務める。
illustration : Shapre text & edit : Wakako Miyake