あの人が大切にしている、暮らしの本。
小説家、翻訳家の松田青子さんが大切にしている、心の本。『帝国を壊すために ― 戦争と正義をめぐるエッセイ―』August 21, 2023
日々、権力とどう向き合うかを教えてくれた。
幼い頃からずっと、私にとって読書はなくてはならない存在です。今は時間がとれないことも多いですが、読めるなら、常に読んでいたいです。20代の頃に本屋で偶然出合ったこの本は、インドの女性作家によるポリティカルエッセイです。あらゆる大きな権力に対して、どういった態度で向き合って生きていくべきかを教えてもらいました。私たちが、私たちらしく、日常を過ごし、創造していくことが、一つの抵抗のかたちになるんだ、ということに目を見開かされ、勇気が湧きました。じゃあそうやって生きてみようと思ったんです。生活するうえでも大切な言葉ですが、小説やエッセイを書くうえでも大切にしていて、時々このページを読み返しています。まさに、日々の指針のような言葉です。
『帝国を壊すために―戦争と正義をめぐるエッセイ―』 著 アルンダティ・ロイ 訳 本橋哲也 (岩波新書)
松田青子 Aoko Matsuda
小説家、翻訳家。著書に『持続可能な魂の利用』(中公文庫)、訳書にカレン・ラッセル著『オレンジ色の世界』(河出書房新社)など。英訳版『おばちゃんたちのいるところ』が世界幻想文学大賞の短編集部門を受賞。
illustration : Shapre text:Watanuki Akane edit : Wakako Miyake