MUSIC 心地よい音楽を。

土曜の朝と日曜の夜の音楽。 今月の選曲家/阿部海太郎 vol.2May 13, 2022

May.13 – May.19, 2022

Saturday Morning

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Title.
The Swan / Pandulen=Wasser=Fall, 1911
Artist.
Boudouin de Jaer, Adolf Wölfli
2回目の土曜日の朝は、アール・ブリュットを代表する画家、アドルフ・ヴェルフリの音楽「The Swan / Pandulen=Wasser=Fall, 1911」です。ヴェルフリの絵に現れる音符や音楽記号を、ボドゥアン・ド・ジャエルという現代の作曲家が読み解いて演奏したという、ちょっと変わったアルバムに収録されています。なんでこんなに心が落ち着くのだろうと考えました。まるで吊るされたモビールを眺めている気持ちです。作曲に欲がありません。どこか機械的な旋律であることでモビールのように風に揺れて、逆説的に自然と調和するのかもしれません。土曜日の朝は、こうやって穏やかに迎えたいものです。この珍しいアルバムのことは以前に舞台の仕事でご一緒した安田成美さんに教わりました。仕事で出会う演劇界の方々は音楽家とは一味違う耳を持っていて、いつも驚き、勉強になります。
アルバム『The Heavenly Ladder / Analysis Of The Musical Cryptograms』収録。

Sunday Night

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Title.
Froggy-Went-A-Courting 300 Turkeys
Artist.
Jim Nollman
なぜか日曜日の夜に聴くことが多い曲です。ジム・ノルマンというミュージシャンが、300羽の七面鳥(!)とセッションしていて、聴いていると、もう月曜日は来ないんじゃないか、来なくても良いんじゃないかと思えてくる、僕にとってある種のパーティーチューンです。このアルバムではクジラやオオカミともセッションしています。環境保護活動にも取り組んでいるというこのアーティストについて詳しくは知りませんが、素晴らしいアルバムだと思います。「スミソニアン博物館」のオーディオアーカイヴの一つで、このライブラリーには他にも素晴らしい音源が沢山あります。
アルバム『Playing Music With Animals: The Interspecies Communication Of Jim Nollman With 300 Turkeys, 12 Wolves, 20 Orca Whales』収録。



&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

音楽好きの“選曲家”たちが月替わりで登場し、土曜の朝と日曜の夜に聴きたい曲を毎週それぞれ1曲ずつセレクトする人気連載をまとめた「&Music」シリーズの第2弾。 23人の選曲家が選んだ、週末を心地よく過ごすための音楽、全200曲。 本書のためだけにまとめた、収録作品のディスクガイド付き。

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作曲家 阿部 海太郎

クラシック音楽など伝統的な器楽の様式に着目しながら楽器の今日的な表現を追求し、楽曲のみならず、コンサートの企画やアルバム制作など、すぐれた美的感覚と知性から生まれる音楽表現に多方面より評価が集まる。舞台、テレビ番組、映画、様々なクリエイターとの作品制作など幅広い分野で作曲活動を行う。音楽を手掛けた作品に、インバル・ピント&アブシャロム・ポラック演出『100万回生きたねこ』、『百鬼オペラ 羅生門』、森山開次演出・振付『星の王子さま ーサン=テグジュペリからの手紙ー』、NHK『日曜美術館』テーマ曲、ドラマ『京都人の密かな愉しみ』など。最新アルバムは『Le plus beau livre du monde 世界で一番美しい本』。 Photo : Takashi Homma

umitaroabe.com

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