MUSIC 心地よい音楽を。

音楽家・大橋トリオさんが選ぶ土曜の朝と日曜の夜の音楽。vol.3April 19, 2024

April.19 – April.25, 2024

Saturday Morning

Title.
Couleur Café
Artist.
Serge Gainsbourg
男三人兄弟の真ん中だけどその割に高1という早い段階で念願の1人部屋を手に入れられたのはこれは快挙であると思っている。家の灯りといえば当時は真っ白な蛍光灯が当たり前で、迷い込んだ蝿がいつもその周りをグルグルしていた。そんなこともあってか白い電気が嫌でたまらなかったから1人部屋ゲットのタイミングに自分で照明を作ることにした。ホームセンターで適当な木材と白熱球とソケットとスイッチ付きのコンセントコードを買い、あえて電球は見えないように(間接照明という概念は自ら編み出したと思い込んでいる)木材を組んでそれにソケット取り付けと配線するだけ。非常にお粗末な出来である、が夜の灯りにも曇天の休日の昼間にもそれだけでそこそこ雰囲気が良い。そんな具合に色々嫌なものが多かったから自分でなんとかできる大人に早くなりたかったものだ。
!? あの照明って今どこいったんだっけ??そんなお粗末手作りなものを当時の彼女に誕生日プレゼントした…ような……そんな痛々しい記憶がジワジワと蘇ってきている。
『Gainsbourg Percussions』収録。

Sunday Night

Title.
Sunday Night
Artist.
Luiz Bonfa
日曜の朝、キャッチボールの日和。平日の疲れがたまってまだまだ寝ていそうな父親を起こしに行くと案の定「今日は寝て曜日や~(当時は週休二日制ではなかった)」と言って昼近くまで寝ていることもあって、そういう時は先に起きている母が代わりにキャッチボールの相手をしてくれた。が、渋々付き合ってくれるといった感じではなく意外と前のめりだ。母の放る球は父の一直線に伸びてくる豪速球とはだいぶ違ってアイドルの始球式のごとく完全に山なりだったから受けるのは物足りないけど、こちらが力一杯に投げる球は意外にもしっかりと受け止めてくれていた。野球少年でもない小学生の力一杯なんて母にとっても可愛いものだったかもしれないけどね。これはもはや細かすぎて伝わらない昭和の風景だろう。
特に何もせずに終わっていってしまう休日は昭和のあるあるではなく今も普通にあるでしょう。その罪悪感には寝る前のちょっとエモーショナルなボッサが良く効きそうです。
アルバム『Bossa Nova』収録。
&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

音楽好きの“選曲家”たちが月替わりで登場し、土曜の朝と日曜の夜に聴きたい曲を毎週それぞれ1曲ずつセレクトする人気連載をまとめた「&Music」シリーズの第2弾。 23人の選曲家が選んだ、週末を心地よく過ごすための音楽、全200曲。 本書のためだけにまとめた、収録作品のディスクガイド付き。

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音楽家 大橋トリオ

大橋トリオとして2007年にデビュー。もう一つの顔として、テレビドラマやCM・映画音楽の作家としても活動。代表作として映画『余命1ヶ月の花嫁』『雷桜』『PとJK』(ともに廣木 隆一監督)など。また、NHK 土曜ドラマ『探偵ロマンス』の音楽や、TBS番組『世界遺産』のテーマ曲などがある。最近では上白石萌音やlily(石田ゆり子)などの楽曲を音楽プロデュース。2024年2月に大橋トリオ & THE CHARM PARK名義で1st Album『Trio & Charm』をリリース。

ohashi-trio.com

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