中学の終わりか高校のはじめの頃だったと思う。ザ・スミスしか聴かない日々があった。どのくらいの期間だったろうか、学校から帰るとすぐステレオの前に座り、レコードに針を落とす。なかでもシングルやラジオセッションなどを集めた編集盤『Hatful Of Hollow』が好きだった(帽子いっぱいの空虚、とはなんて素敵なタイトル!)。スミスは歌詞がすごいと当時は言われていたが、正直その文学性についてはぜんぜんよくわからなかった。硬質にビートを刻むドラムとピックで複雑なメロディを弾くベース、ジョニー・マーのキラキラした雨だれのようなエレキギターのアルペジオ、そこにモリッシーの深い声が重なるとき、ぼくはなんとも言えない解放感を感じた。 アルバム『Hatful of Hollow』収録