Music

土曜の朝と日曜の夜の音楽。 今月の選曲家/猪野秀史 (INO hidefumi) vol.2February 10, 2023

February.10 – February.16, 2023

Saturday Morning

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Title.
You’re Gonna Make Me Lonesome When You Go
Artist.
Ben Watt
気になっていた近所の喫茶店にふらっと立ち寄った時のこと、ドアを開けると深煎り珈琲の香りと共にこの曲が静かに流れていて、なかなかいいお店に出会えた! と少し嬉しくなりました。この曲が収録されたアルバムが終わり、そのままTracy Thornの「A Distant Shore」が流れそうな雰囲気と気配。しかし自分の予想は大きく的をはずれ、B’zの「ウルトラ・ソウル」が流れ始めました。う〜む…。でも、聴いているうちにサビのウルトラソウル! が近づいて来ると、思わず小声で「Hey!」と叫びそうな気分になって来たので、曲の途中で静かに席を立ちました…。この曲はBen Wattが19歳のときのもので、悲哀が共存した危うさみたいなのを勝手に感じてしまいます。ジャケットが全てを物語っている作品。そして、気の遠くなるような虚無感がゆっくり渦を巻いているような寒々した冬に思い出す曲です。2月の寒い土曜の朝、私小説的な音の温もりとロンサム感に身を委ねる心地良さを堪能してみて下さい。
アルバム『North Marine Drive』収録。

Sunday Night

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Title.
One Nite Blues
Artist.
仲井戸麗市
暖房を効かせ、アイスを食べながら、冬の夜に真夏の曲やトロピカルな曲をノンビリと聴きたくなる時があります。この曲も真冬に聴きたくなる真夏の曲です。ハードボイルドな任侠的サウンドで、淡々とストイックに刻まれるリム・ショット。火傷しそうな情熱が籠ったギター。そして、絞り出される切迫したボーカルはそのまま夜空に突き刺さりそうだ。「きみに友達が少ないのはこんな世界観が好きだからだ!」と自分に言いたい。でも人生それで正解だったと思うような、そんな曲です。やりきれない日曜の夜は、孤独と情熱に身を委ねる心地良さを堪能してみて下さい。
アルバム『THE 仲井戸麗市 BOOK』収録。



&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

音楽好きの“選曲家”たちが月替わりで登場し、土曜の朝と日曜の夜に聴きたい曲を毎週それぞれ1曲ずつセレクトする人気連載をまとめた「&Music」シリーズの第2弾。 23人の選曲家が選んだ、週末を心地よく過ごすための音楽、全200曲。 本書のためだけにまとめた、収録作品のディスクガイド付き。

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ミュージシャン 猪野 秀史 (INO hidefumi)

宮崎県延岡市生まれ。自身の作品を発信するインディペンデントレーベル〈INNOCENT RECORD〉主宰。 フェンダーローズをメインに据えたエレガントかつ攻撃的な楽曲で10数枚の7inchレコードをリリース。 ノンプロモーションにもかかわらず、口コミで国内外からも支持を獲得し数々のクラブヒットを生み出す。 1st.アルバム『SATISFACTION』(2006年)はインディペンデントレーベルの可能性を引き出した鮮烈なデビュー作となった。また全作品のアートワーク制作や他ミュージシャンの楽曲提供、編曲など活動は多岐に渡る。自身による初のボーカルアルバム『SONG ALBUM』(2018年)は細野晴臣、林立夫、鈴木茂、 小西康陽、常磐響、沖祐市(東京スカパラダイスオーケストラ)、ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)、馬場正道らが推薦コメントを寄稿。その世界観は幅広い層の心を揺さぶりながら浸透中。2021年には新作『IN DREAMS』を発表。

innocentrecord.net

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