MOVIE 私の好きな、あの映画。
蒼井優が踊る姿に感動した『フラガール』/シンガーソングライター 森ゆにさんが語る、 極私的・偏愛映画論。July 25, 2026
This Month's Favorite Theme踊る、蒼井優に偏愛。

クライマックスは、蒼井優によるタヒチアンダンス。
2023年度のNHK連続テレビ小説『ブギウギ』に蒼井優さんが産休後初めて出演し、久しぶりにそのお姿を拝見しました。梅丸少女歌劇団のトップスターで、踊りに対しては誰よりもストイック、という役どころでした。彼女が踊る姿を画面越しに観て、かつて映画で観た感動が、ほわっと胸に蘇ったのでした。『フラガール』や『花とアリス』を観たのはもうずいぶん前のことでしたが、どちらの作品でも柔らかい弧を描いて踊っていた蒼井優さんの姿が、私の記憶にずっと残っています。
『フラガール』は、1960年代、福島県いわき市で石炭産業が衰退し、常磐炭鉱が人員削減を進めるなかで生まれた実話をもとにした映画。職員のリストラに伴い、雇用を復活させ町おこしをおこなう目的で立ち上げられた『常磐ハワイアンセンター(現スパリゾートハワイアンズ)』の誕生、そして看板ダンサーとしてフラダンスチームを組んだ地元の少女たちの成長を描いたお話です。
エネルギー革命とそれによる雇用の変化。いわゆる「将来なくなる仕事」は今もずっとつきまとう問題です。『常磐ハワイアンセンター』が果たして解決のための最善策なのかどうか、自分があの時あの場にいたら一体どう思ったでしょう。
「日本のこんな田舎になぜハワイ?」と疑問に思った人々、娘が肌を露出して人前で踊ることに抵抗した親たちの気持ちにも、共感してしまう。町を救うために仕方ないと、見守るしかなかった住民も多かったのではないかと察します。様々な事情がありながらも、映画は『常磐ハワイアンセンター』の踊り手としてフラダンスを修得していく少女たちの純粋な熱意に焦点を当てます。舞台へ上がる覚悟を少しずつ決めていく彼女たち。いくつかの印象的な踊りのシーンをきっかけに、周囲の目も少しずつ変わっていきます。
心が動かされる瞬間には、セリフはほとんどありません。とりわけ終盤で蒼井優さん演じる紀美子が踊る、タヒチアンダンスのソロシーンは時間や背景、感情、いろんなものを内包していて、彼女が細く柔らかい手足を動かし、くるくる回るたびに、これまでのストーリーが走馬灯のように感じられました。
紀美子が最後のポーズを決めたあと、笑いながらも次第に顔が涙でぐずぐずになっていくのですが、自然と出てしまったんだろうなあ。言葉のかわりに身体表現と存在感で空気を動かせる素晴らしい俳優だなと、踊る彼女を観て思ったのでした。

『フラガール』
Director
李相日
Screenwriter
李相日
羽原大介
Year
2006年
Running Time
120分
Wacth now 配信はこちらから
illustration : Yu Nagaba movie select & text:Yuni Mori edit:Seika Yajima














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