FOOD 食の楽しみ。
煮込んで、冷まして、また煮込む。 イラストレーターの山本由布子さんが数日かけて作る、秋のジャム。November 18, 2023
2023年10月20日発売の『&Premium』の特集は「毎日を気持ちよく過ごす、100のこと」。ゆったり過ごす休日はもちろん、仕事などに勤しむ平日でも、気持ちをふっと緩めて気持ちよさを感じられるような、ベターライフの秘訣を探りました。ここでは、イラストレーターの山本祐布子さんが、時間をかけてジャムを煮る、その豊かな時間について教えてくれました。
シンプルな工程でも、 時間がおいしくしてくれる。
イラストレーターであり、〈mitosaya薬草園蒸留所〉でジャム作りを担当する山本祐布子さんに旬の果実を使ったジャムのレシピを教えてもらった。
「ジャム作りで欠かせないのはとろみをつけるペクチン。これを豊富に含んでいるのがフルーツの種なんです。いちじくは種ごとぐつぐつ煮込めて扱いやすい。柑橘系と違って皮をむく手間もあまりかからないので、初心者の方も挑戦しやすいと思います」
山本さんのジャム作りのポイントは時間をかけること。煮る前日の夜にいちじくに砂糖をかけて一晩おく。しっかり水分が出たら、翌日、鍋で煮込む。一度冷ましてから再加熱するときにハーブや蒸留酒を加えて仕上げる。
「一日で一気に作ろうと思うと大変ですが、プロセスを分けることで〝今日は砂糖をまぶすだけで終わり〞と気楽に取り組めます。また、一度煮込んでしっかり冷ますことでとろみのつき具合がわかり、再加熱のときに調整しやすくなります。今回はローズティーの茶葉に、同じくバラ科のイチゴで作ったリキュールを合わせました。果実に茶葉やハーブ、お酒をアクセントに足すだけで、簡単に奥行きのある味わいを生み出せるのがジャム作りのいいところ。チーズと一緒に食べたり、肉に合わせたり、食の楽しみも広がります」
茶葉とお酒を組み合わせ、香りを立てる「いちじくと薔薇のジャム」の作り方。
夏から秋にかけて旬を迎える、いちじく。ジャムにすることでよりおいしく、長く楽しめる。未開封であれば約1 か月ほど冷蔵保存が可能だが、長期保存用のレシピではないため、早めに食べ切るのがよい。上品な甘さなので、料理にも合わせやすい。「いちじくの旬が終わったら、柿や洋梨、りんごで作るのもおすすめですよ」と山本さん。
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【材料(1500㎖分)】
- いちじく…1.5㎏
- グラニュー糖…600~700g
- 夏みかんの果汁(好みの柑橘でOK)… 1 個分
- ローズティーの茶葉(好みの茶葉でOK、ドライローズで代用可)…約5 g
- リキュール(好みの酒でOK、使用したのは〈mitosaya薬草園蒸留所〉の「145 WHITE BERRY BOUQUET」)…約大さじ1
- ボウルに半分にカットしたいちじくとグラニュー糖を入れて、いちじくをスプーンで押しつぶしながら馴染ませる。夏みかんを搾って軽く混ぜ合わせ、冷蔵庫に一晩おく。
- 鍋に「1」 を入れて、強火にかけて煮る。いちじくが煮崩れたら、火からおろして冷ます。
- 細かく刻んだローズティーの茶葉を2 に加え、再び火にかけて弱火で煮る。
- 好みのとろみになったら火から外し、リキュールを回しかけて、加熱殺菌した温かい瓶に詰める。
PROFILE
山本祐布子 Yuko Yamamoto イラストレーター
東京生まれ。京都精華大学テキスタイル学科卒業。イラストレーターとして雑誌や広告などで活躍。2016年より千葉県大多喜町に移り住み、ボタニカルブランデーを製造する〈mitosaya薬草園蒸留所〉を夫の江口宏志さんと営む。主にジャムやブレンドティー、シロップなどの加工品を手がける。
photo : Takashi Ehara text : Mariko Uramoto