台湾スイーツ食べ比べ

台湾の草餅は餡や形のバリエーションが豊富。【&Taipei 台湾スイーツ食べ比べ 】May 16, 2022

「草餅」
「草仔粿(つぁうあくえ)」とは昔ながらの草餅のこと。台湾では先祖の墓参りをする4月5日の「清明節」に食べる習慣がある。原料となるヨモギやハハコグサ(鼠麴草)はこの時季に葉が柔らかくなり、食材として使いやすくなる。これらの草は冷凍保存され、草餅そのものは一年を通して食べられている。草餅は市場で売られていることが多く、店によって形や食感は様々だ。全体的に日本の草餅よりもボリュームがあり、甘さは控えめなのが特色。さらに面白いのは小豆餡やゴマ餡といった「甘い系」だけでなく、「おかず系」の餡もあること。特に「菜脯米(つぁいぽぉびぃ)」と呼ばれる千切りした大根を乾燥させ、干しエビやシイタケなどと炒めた餡は広く愛されている。腹持ちが良いので、遠出の際のおやつとしても親しまれている。
タロイモ餡やピーナッツ餡の変わり種もあり。

タロイモ餡やピーナッツ餡の変わり種もあり。

 東門市場にある『富富の正』。30年以上の経験を持つ職人が手がけており、元々は卸専門だったが、4年前から小売りも始めた。ハハコグサを使用した生地には自家製の餡がたっぷりと詰まっている。餡はその日の天気や気温に合わせてレシピを微調整しており、例えば、夏場は食欲が落ちるため、大根餡は胡椒を多めにするなど、工夫を重ねている。餡の種類は全部で8種類。大根餡や小豆餡のほか、濃厚な風味のゴマ餡や、粒々感のあるピーナッツ餡、さらに細かくカットしたタロイモを干しエビと炒めた珍しい餡もある。以前はチョコレート餡を作ったこともあったが、奇抜すぎて失敗。一方でゴマ餡やピーナッツ餡は万人受けする味わいで、すっかり定着している。散策のお供にいかが。

富富の正
フーフーダーツェン

台北市中正區金山南路一段110巷4弄2號(東門市場内) ☎0986‒638‒586 8:00~13:00(売り切れ次第終了) 月休 1個25元。

富富の正 フーフーダーツェン
東三水街市場で老夫婦が守り抜く昔ながらの味。

東三水街市場で老夫婦が守り抜く昔ながらの味。

 名刹・龍山寺近くの市場の中にあり、お供え物になる餅菓子のほか、チマキや大根餅などを販売している。切り盛りするのは80代の老夫婦。妻は小学校卒業後に職人である父親の下で働き始め、その味を受け継ぐため、六十数年前に夫と店を開いた。現在は週4日の営業だが、朝4時から仕込みをするのは変わらない。ヨモギの香りが濃厚で、弾力性もある草餅は一口食べるだけで、いかに丁寧に作られているかがわかる。餡には小豆餡やゴマ餡のほか、大根餡や緑豆餡などもある。大根は日本産を使用し、きめ細かな食感が評判だ。さらに緑豆餡は緑豆を生姜や塩と一緒に炒めたもので、塩気と甘さのバランスが絶妙。「草餅は甘いもの」という固定観念を取り払い、試してみたい。1個20元。

紅龜伯
あんくぅぺっ

台北市萬華區三水街70號(東三水街市場内の東56番ブース) ☎02‒2308‒3503 8:00~13:00(売り切れ次第終了) 月水木休ほか火不定休

紅龜伯 あんくぅぺっ

文/片倉真理 写真/片倉佳史
※この記事は、No. 101 2022年6月号「&Taipei」に掲載されたものです。


台北在住ライター・コーディネーター 片倉真理

1999年から台北に暮らす。台湾に関する書籍の執筆、製作のほか、雑誌のコーディネートなども手がける。台湾各地を隈なく歩き、料理やスイーツから文化、風俗、歴史まで幅広く取材。著書に『台湾探見』、共著に『台湾旅人地図帳』(共にウェッジ)、『食べる指差し会話帳』(情報センター出版局)など。

instagram.com/marikatakura

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