長田佳子の季節のハーブを愉しむお菓子。

vol.8 ディルとオレンジのボーロHerbal Sweets / November 20, 2020

自然からのいただきものであるハーブの力を取り入れて、心と体に優しく寄り添う「レメディ」のようなお菓子を作る〈foodremedies〉として活動する菓子研究家の長田佳子さん。砂糖にはない甘さやほのかに感じる苦味、鼻をくすぐるいい香り——。ハーブはそのときの心と体の状態によって、五感で感じ取るものが繊細に変化する奥深さを秘めた暮らしに役立つ植物です。そんな季節のハーブを使った長田さんオリジナルのお菓子のレシピを紹介するこの連載。第8回は「ディルとオレンジのボーロ」をお届けします。

This Month's Herbal Sweets

「ディルとオレンジのボーロ」

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小さな雪玉のような、口の中でホロホロと溶けていくボーロ。

冬の訪れを感じさせる木枯らしが吹く11月。雪景色を投影したようなお菓子を作り、これから迎える新しい季節を楽しむのも良き時間です。ボウルに必要な材料を入れて混ぜ合わせ、丸めて形を作り、焼くだけの簡単なおやつ。子どもの頃に食べた「ボーロ」をイメージして、雪玉を作るような感覚で優しく丸めてみましょう。生地には、乳製品と相性が良いディルをドライにし、軽くほぐしたものを加えて。爽やかな香りと噛んだときに感じられるほのかな甘味が特徴です。ディルは魚料理や肉料理だけではなく、お菓子に使っても香りと風味を楽しめるので、ぜひご自宅で育ててみてほしい手軽なキッチンハーブです。もうひとつ、ボーロを大人な味に引き上げてくれるのが、細かく刻んだセミドライのオレンジピール。粉糖とフェンネルパウダーをまぶしたボーロは、フェンネルの甘さとほんのりとした苦味、爽やかな香りが広がるオレンジピールとディルが複雑に絡み合います。口の中でホロホロと崩れる、雪のような口どけを楽しみながら、心穏やかなお茶の時間を過ごしましょう。

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ディル

セリ科の一年草。北欧をはじめヨーロッパで料理に使われる定番のハーブです。英名の「Dill」(ディル)は、古代ノルウェー語で「なだめる、和らげる」を意味する「Dilla」(ジーラ)が語源。気が立っているときに、香りを嗅ぐだけでも、心を穏やかにしてくれるような力を持っています。ハーブティーにして飲んでみても。ビタミンC、カルシウム、マグネシウム、ビタミンAなどの栄養を含み、胃の消化を助けてくれる働きや抗酸化作用があるといわれています。
 

レシピ 30個分

・ドライディル1g ※乾燥させたディルをほぐして使用。
・オレンジピール10g ※細かく刻んだセミドライを使用。
・バター80g
・米油10g
・塩1g
・薄力粉180g
・アーモンドパウダー20g
・きび砂糖25g
・粉糖適量 
・フェンネルパウダー ※ふたつまみ程度

How to cook

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1.ボウルに柔らかくしたバターときび砂糖を入れる。ゴムベラで混ぜ、塩、薄力粉、アーモンドパウダーを加える。生地が馴染んできたら、オレンジピールと米油を加え混ぜ、最後に乾燥させたディルを加えて、ひとまとまりになるまで手で混ぜる。
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2. 10gずつ丸めたものを天板に並べる。オーブンを170℃に設定し、20分を目安に焼き、天板の上で冷ます。
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3. 2が冷めたらボウルの中で粉糖、フェンネルパウダーをまぶす。
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photo: Hiroko Matsubara edit & text : Seika Yajima
ハーブ:まるふく農園 キッチンクロス提供:FLUFFY AND TENDERLY
器:田中直純 他

菓子研究家 長田佳子

<プロフィール>

菓子監修 長田佳子〈foodremedies〉
菓子研究家。レストラン、パティスリーなどでの修業を経て、YAECAフード部門「PLAIN BAKERY」でメニュー開発、お菓子の製造を担う。2015年に独立。〈foodremedies〉という屋号でハーブやスパイスなどを使ったまるでアロマが広がるような、体に素直に響くお菓子を研究している。著書に『foodremediesのお菓子』(地球丸)、『全粒粉が香る軽やかなお菓子』(文化出版局)などがある。

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