花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」

厄除けを祈る「炮烙割」。花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」 Vol.56September 15, 2022

花屋<みたて>に習う植物と歳時記 折々に見立てる 京の暮らし

四季折々に迎える歳時記を、京都の花屋『みたて』が植物を通して表現。一つの作品を通して、京都ならではの生活が見えてきます。

厄除けを祈る「炮烙割」。 みたて

厄除けを祈る「炮烙(ほうらく)割」。

 円覚上人が仏の教えを広めるべく鎌倉時代に始め、700年以上の歴史を持つ壬生(みぶ)狂言。面をつけた役者が身振り手振りで演じる無言劇で、その演目は30にのぼる。公開されるのは春・秋・節分の年3回。白い糸を観客に向かって投げる「土蜘蛛」などと共に広く知られるのが「炮烙割」だ。春と秋の延べ10日間の初番に演じられることが決まっているこの演目は、節分と深い関係がある。毎年2月2日から4日に開かれる「壬生寺節分厄除大法会」に参拝する人々は、炮烙と呼ばれる素焼きの皿に名前や数え年を墨で書き、厄除けを祈願して奉納。狂言「炮烙割」ではその積み上げた炮烙を落として割ることで、厄除けと開運が成就するとされるのだ。物語は炮烙売りが騙そうとした羯鼓売り(太鼓売り)から仕返しされ、商売の品の炮烙を割られてしまうというもの。人々が祈りを込めて奉納した、約千枚もの炮烙が下の土間まで落ちる様はまさに圧巻。
『みたて』が節分に仕立てたのは、重ねた古い炮烙と柊と大豆のあしらい。割れたものを置くことで、狂言の演目を彷彿とさせる仕立てになった。鬼を追い払う柊と、豆撒きで鬼を退散させる大豆。節分にちなむ植物に添えられた炮烙が、京都ならではの節分を演出しているのだ。

photo : Kunihiro Fukumori edit & text : Mako Yamato
*『アンドプレミアム』2020年3月号より。


花屋 みたて

和花と花器を扱い、四季の切り取り方を提案する京都・紫竹の花屋。西山隼人・美華夫妻がすべてを分担し営む。

hanaya-mitate.com

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