花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」

原点に返る「門松」。花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」 Vol.55September 08, 2022

花屋<みたて>に習う植物と歳時記 折々に見立てる 京の暮らし

四季折々に迎える歳時記を、京都の花屋『みたて』が植物を通して表現。一つの作品を通して、京都ならではの生活が見えてきます。

原点に返る「門松」。 みたて

原点に返る「門松」。

 京都の正月を感じさせる景色のひとつに根引き松がある。現代にあって主流の松竹梅が飾られた華やかな門松とは違い、ひっそりとした仕立て。根のついた雌雄の松を、それぞれ和紙で包んで紅白の水引を掛け、玄関の両脇に飾る門松の原型だ。歳神様の依り代としての役目を果たす門松は、根付きの松を使うことで商売などが根付くようにという意味と、ますますの成長を願う気持ちが込められている。向かって右側は雄松、左側には雌松。京都の松の内が明ける1月15日まで、楚々とした姿で玄関を飾り、街を彩るのだ。
『みたて』が作る門松はその原点に返り、依り代としての意味を強く持たせた。思い描いたのは氏神でもある上賀茂神社の立砂。神代の昔、御祭神の賀茂別雷大神が降臨した神山をかたどった立砂は、その頂に松葉が立てられ神を迎える依り代とされている。京丹波に工房を構える『晴耕社ガラス工房』による手吹きの円錐ガラスに、盛るように詰めた砂で立砂を表現。和紙と水引をあしらっ た松をすっと立て、凛とした空気をまとう門松に仕上げた。ただそこに置くだけで、差し込む光にまで神々しさを感じさせる存在感は圧倒的。新年を迎える準備はすべて整ったと、満ち足りた気持ちにさせてくれるものとなっている。

photo : Kunihiro Fukumori edit & text : Mako Yamato
*『アンドプレミアム』2020年2月号より。


花屋 みたて

和花と花器を扱い、四季の切り取り方を提案する京都・紫竹の花屋。西山隼人・美華夫妻がすべてを分担し営む。

hanaya-mitate.com

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