花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」

August 11, 2022 幽玄の美を思う「櫂の捶撥」。花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」 Vol.51

花屋<みたて>に習う植物と歳時記 折々に見立てる 京の暮らし
 

四季折々に迎える歳時記を、京都の花屋『みたて』が植物を通して表現。一つの作品を通して、京都ならではの生活が見えてきます。

 
幽玄の美を思う「櫂の捶撥」。 みたて

幽玄の美を思う「櫂の捶撥(すいはつ)」。

「大堰川 うかべる舟のかがり火に をぐらの山も名のみなりけり」と嵐山の鵜飼の情緒を詠んだのは在原業平。平安時代、清和天皇が始めたと伝わる宮廷鵜飼は、業平をはじめとする貴族たちを魅了してきた。「暗くなりぬれば鵜舟どもかがり火さしともしつつ、ひと川さわぎたり。をかしく見ゆることかぎりなし」と、宇治での鵜飼が綴られているのは「蜻蛉日記」。同じく平安時代の天禄2(971)年、奈良の長谷寺に詣でた作者・藤原道綱母が行き帰りに興味深く鵜飼を見物した様が記されている。
 1200年の時を経て、嵐山と宇治ともに鵜飼を眺めるのは船上から。暑い京の夏も日が暮れ、川風を感じれば、いくぶん涼やか。篝火に浮かび上がるのは風折烏帽子に腰蓑姿の鵜匠と鵜たち。巧みな手綱さばきで次々と川魚を捕らえていく様子はいつまでも見飽きることがない。平安から現代まで変わることなく、鵜飼は見る人を魅了する夏の風物詩なのだ。行く夏を惜しみつつ味わいたい幽玄の美がそこにある。
 かつて舟を漕ぐのに使った櫂を捶撥に、漁つながりで飛鳥時代の蛸壺を花器に見立てた夏の花入。桔梗、赤い実をつけた瓢箪木、鞍馬苔を生けて可愛らしさを添えている。

photo : Kunihiro Fukumori edit & text : Mako Yamato
*『アンドプレミアム』2019年10月号より。


花屋 みたて

和花と花器を扱い、四季の切り取り方を提案する京都・紫竹の花屋。西山隼人・美華夫妻がすべてを分担し営む。

hanaya-mitate.com

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