花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」

風物詩「川床」を清流とともに。花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」 Vol.3 / July 08, 2021

花屋<みたて>に習う植物と歳時記 折々に見立てる 京の暮らし

四季折々に迎える歳時記を、京都の花屋『みたて』が植物を通して表現。一つの作品を通して、京都ならではの生活が見えてきます。

風物詩「川床」を清流とともに。

風物詩「川床」を清流とともに。

 京都に夏を告げる風物詩のひとつが、川のせせらぎにしつらえられる川床(かわどこ)の姿。江戸時代に遠来の客をもてなしたことに起源を持ち、川面を吹き抜ける風で涼をとりながら、鱧や鮎など夏の京の味に舌鼓をうつ。ゆかともかわどことも呼ばれ、読み方に迷うものの、実はそれぞれの由来を持つ別のもの。街中の鴨川に設けられるのは、高床をその名の由来とする床で、読み方は「ゆか」。一方、貴船では水上の床の間の意味を持つことから、「かわどこ」と呼ばれるようになったという。

〈みたて〉が切り取るのは、もちろん色濃い緑に包まれる貴船の川床。ぐっとせり出した木々や、苔、水草の姿は、自然がもたらしてくれる野趣溢れる庭といったところ。清冽な水の流れは手を伸ばせば届くほどの近さにあり、時に激しい水音もまた耳に涼をもたらしてくれる。自然に抱かれるように料理を楽しむひとときだ。

 六寸の木箱の中に再現された川床。ぐっと張り出した青もみじは貴船の床さながら。苔をイメージしたてまり草を敷き詰め、センジュガンピ、ヌマトラノオ、桔梗、山帰来(さんきらい)など、時々の草花をあしらい、川岸の自然な風情を作り上げた。箱の半分は持ち運びもできる水を模した仕掛け。ふわりと浮かぶ青もみじは、川面を流れるかのよう。蓋を取った瞬間に、清らかな水が現れる仕掛けは、はっと心を打つもの。たとえ京に暮らしても少しばかり遠い貴船の涼を運んできてくれるのだ。

photo : Kunihiro Fukumori edit & text : Mako Yamato
*『アンドプレミアム』2015年9月号より。


花屋 みたて

和花と花器を扱い、四季の切り取り方を提案する京都・紫竹の花屋。西山隼人・美華夫妻がすべてを分担し営む。

hanaya-mitate.com

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